研究実績の概要 |
これまで、小型で飼育が容易なトラザメを実験魚として選定し、サメ類における繁殖内分泌制御機構を分子レベルで理解することを目的に研究を進めてきた。今年度は、脳から3種の生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)遺伝子と4種類のGnRH受容体遺伝子を同定し、GnRH分子が下垂体FSHの産生活動を制御する可能性を示した。また、これら3種のGnRHをペプチド合成し、下垂体の器官培養実験により、GTH分子の発現に及ぼす効果を検証した。しかし、GnRHに対する器官の応答にバラツキが大きく、対照群と比べて、統計的に有意な差は認められず、GnRHの明確な効果は検証できなかった。 一方、美ら海水族館で飼育している雌雄のジンベイザメの生殖行動や生殖腺の発達を評価するために、血漿中のエストラジオール-17β(E2)、17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(17α-20βP)、テストステロン(T)と11-ケトテストステロン(11-KT)を測定した。また、ジンベイザメの血漿に存在するペプチドをLC-MS/MSにより分析した。雄のジンベイザメにおけるTおよび11-KT、E2および17α-20βP濃度は、共に4月よりも10月の方が高い値を示した。一方、雌のジンベイザメにおいては、T濃度は4月よりも10月の方が高い値を示したが、11-KTは検出されず、E2および17α-20βP濃度は、4月よりも10月の方が高い値を示した。従って、性ホルモンの濃度は、雌雄ともに、生殖行動や生殖腺の発達に伴ない変動することが示唆された。また、ジンベイザメの血漿抽出物中に213種類のペプチドを見出し、生体防御や神経回路の形成に寄与するペプチドを同定している。
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