本研究は、グレリンやそのホルモンファミリーであるモチリンの非哺乳類における存在意義を探る目的で、ゲノム編集技術(TALEN)により目的遺伝子を欠損させたKOメダカを作出して、その動物に遺伝子欠損による異常が生ずるか否かを解析する。 本年度は前年度からヘテロ個体を掛け合せてホモ個体を得る作業を進めて作出したグレリンあるいはモチリン受容体遺伝子を欠損させた(GHS-R-KOおよびMLN-R-KO)メダカの個体数が実験に用いるまで十分に増すことができたので実験を開始した。 メダカにおいてGHS-Rは前腸や中腸に遺伝子発現が多い。またグレリンは摂食調節に働くホルモンとして知られていることから、正常個体(CT)とGHS-R-KOの摂食行動を三日間絶食させた個体に餌を与えて比較した。その結果、オスにおいて有意な摂食量の減少が認められ、メスでは減少傾向が見られた。 また、RNAseq解析を行うため、GHS-R-KO並びにCTの前腸と中腸を摂餌後1時間と絶食1週間後のメス個体各3匹から採取してプールした。一方、MLN-Rは主に脳、眼、腎臓で遺伝子が高発現していることから、KO並びにCTのオス個体各3匹から脳、眼及び腎臓を採取しプールした。GHS-Rの結果は解析中であるが、MLN-Rの腎臓の解析によって、SMAD3、pvalb-1、NCCRP1、StARの遺伝子発現が、脳においては成長ホルモン、プロラクチン、黄体形成ホルモン、gametocyte-specific factor-1がKO個体で低下していた。 本研究の結果から、メダカにおいてGHS-Rは摂食調節に、MLN-Rは水・電解質代謝、造血、免疫、ステロイドホルモン産生、生殖機能に関わっている可能性が示唆され、魚類におけるグレリンやモチリンの作用は、哺乳類と類似する点と相相違する点があることが明らかとなった。
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