研究課題/領域番号 |
17K07479
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80332477)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キノコ体 / 記憶中枢 / ケニオン細胞 / 投射ニューロン / 並行処理 / 触角葉 / 後胚発生 / 不完全変態昆虫 |
研究実績の概要 |
本研究は多くの動物の嗅覚処理経路に共通にみられる並行経路についての具体的な機能や進化的起源についての示唆を得るため、進化的に古い昆虫(ワモンゴキブリ)を用いた形態・生理・行動学的研究を行うものである。 初年度は当初の計画通り、一次嗅覚中枢(触角葉)から出力する投射ニューロンとシナプスを形成するキノコ体内在ニューロン(ケニオン細胞)の組織化について調べた。個々のケニオン細胞はその入力部位(樹状突起)をキノコ体の傘部に、出力部位(軸索、軸索終末)を葉部の特定の層内に持つ。特定層への微量蛍光色素注入によって、葉部内で発生依存的に形成される層構造と傘部との対応関係を精査することが可能となった。 その結果、後胚発生前に形成されるクラスIIケニオン細胞の樹状突起は傘の先端域に、後胚発生後に形成されるクラスIケニオン細胞の樹状突起は傘の基部域にほぼ限局していた。触角葉前部の小さな糸球体群からの投射ニューロンは傘の先端領域に、後部の大きな糸球体群からの投射ニューロンは傘の基部領域に軸索終末を持つことから、前者がクラスIIケニオン細胞、後者がクラスIケニオン細胞とほぼ排他的なシナプス接続を形成することが強く示唆された。また、キノコ体の内在ニューロンの大多数を占めるクラスIケニオン細胞の樹状突起はキノコ体の傘部中で重複しつつも三次元的に異なる領域を占めることが明らかとなった。 本結果は、1)キノコ体の異なる領域に入力する嗅覚投射ニューロンやその他の感覚モダリティーについての情報が異なるケニオン細胞の集団で処理されること、2)嗅覚並行経路はキノコ体の出力部まで保持されていること、を示すものである。なお、結果の一部については原著論文中で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初計画に沿って実験を遂行した。キノコ体葉部へ微量色素注入を行うことで、記憶中枢であるキノコ体の内在性ニューロンの三次元的組織化について調べた。その結果、触角上の異なる嗅感覚子に由来する2つの嗅覚情報並行経路が少なくともキノコ体出力域までは保持されていることを示す重要な結果を得ることができた。結果の一部については原著論文中で公表したが、詳細なデータについては別の論文中で公表する予定である。 すでに当初の到達目標を達成しており、国内学会での発表も完了しているが、論文化への取り組みがやや遅れていることを考慮し、達成率は9割と自己評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度においては当初計画通り、電気生理学的手法を用いて嗅覚並行経路の具体的機能を解明することを目指す。ゴキブリが野外にいるとき、能動的に触角を動かしているとき、定位行動をおこしている際にはいずれも触角が風向変化や風の強度変化に晒されるが、このときに嗅覚処理ニューロンの自発発火や応答がどう修飾されるのかについてはこれまでほとんど検討されていない。細胞内記録により、投射ニューロン、キノコ体出力ニューロンにおける状況依存的な応答変化について調べる。また、触角の自発運動を妨げないプレパレーションを作成し、触角の位置や運動によって自発発火がどう変化するのかについて調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助員への謝金が若干余ったためであり、翌年度に同研究補助員の謝金として使用予定である。
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備考 |
結果の一部については北海道大学から日本語版および英語版のプレスリリースを行い、 複数のネットニュースで報道された。
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