研究課題/領域番号 |
17K07481
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
宮園 貞治 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50618379)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 幼少期ストレス / 母仔分離 / 扁桃体 / 性差 / 神経活性 / c-Fos / 嗅覚 / 高所 |
研究実績の概要 |
幼少期に虐待やネグレクト(育児放棄)などの大きなストレスを経験すると、脳内に異常が生じ、将来うつ病や心的外傷後ストレス症候群(PTSD)などの不安障害の発症率が高くなることが知られている。また、心臓病や肺がんの発症率も上昇すると言われている。このように、幼少期ストレスは、脳内神経回路の正常な成熟を妨げることで、精神だけでなく身体にも将来的に深刻な異常をもたらす危険性がある。本研究では、幼少期に母仔分離ストレスを経験したマウスを用いて、幼少期ストレスによって精神と身体の両方に異常を引き起こす脳内神経回路の変容機序の解明を目的とした。前年度に、幼少期ストレスが高所ストレス耐性機構に対して雌雄で異なる影響を与えることを見出した。 平成30年度は次のような成果を得た。 1.異なる性質の匂い物質を用いて匂い認知試験を行った。嫌悪臭である酪酸に対する行動には、幼少期ストレスは雌雄で異なる影響を与えた。すなわち、オスでは嫌悪行動が全く見られなくなったのに対して、メスでは嫌悪行動がわずかに低下しただけであった。2.先天的恐怖を誘起するピラジン化合物に対する行動には、幼少期ストレスの影響は雌雄いずれにおいても見られなかった。3.脳内神経活性の網羅的解析を行った。幼少期ストレスは、情動やストレスに関する脳部位である扁桃体における神経活性に大きな影響を与えた。以上のことから、幼少期ストレスが嗅覚を介するストレスを制御する脳内神経回路にも影響を及ぼし、その影響にも性差があることが明らかになった。嗅覚と高所という異なるストレスに対する耐性に、幼少期ストレスが異なる影響を与えることは興味深い。今後、この新たに派生した研究課題についても取り組んでいく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究実施計画に記載したスケジュール通り研究が進行しているので。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ予定通り進行しているので研究の大幅な変更はないが、計画していた研究から派生した研究課題について今後取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新たに派生した研究課題に取り組むために、当初の研究計画を変更したため。 研究計画の遂行にあたり、免疫組織化学染色実験および薬物の脳内微量注入実験に必要な試薬や消耗品を購入する。
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