研究課題/領域番号 |
17K07482
|
研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
出口 竜作 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (90302257)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 刺胞動物 / ヒドロ虫綱 / 卵成熟誘起ホルモン |
研究実績の概要 |
エダアシクラゲには、明刺激(暗→明)により配偶子を放出する「明タイプ」と、その逆の暗刺激(明→暗)により配偶子を放出する「暗タイプ」が存在する。両者の交配によってF1ハイブリッドの作出は可能であるものの、このハイブリッドを親とした場合に子が作出できないこと、また、両者のミトコンドリアDNAの塩基配列が大きく異なることなどから、両者は別種に近い存在であると考えられてきた。今回、両タイプのそれぞれ雌個体から卵巣のみを単離し、トランスクリプトーム解析を行うことにより両者の遺伝子産物を比較した。その結果、卵成熟誘起ホルモンのプレプロホルモンがどちらの卵巣にも発現していることが確認された。両者のプレプロホルモンは、アルギニン-プロリン-アルギニン-プロリン、C末端のアミド化に必須なグリシン、および下流の切断部位を共通して含んでいるものの、その上流(N末端側)の配列は大きく異なっていた。N末端側の長さを変えたペプチドを合成し、卵母細胞に投与して卵成熟誘起率を比較した実験からも、N末端側の配列が切断されて4アミノ酸(RPRPamide)になった時に卵成熟誘起ホルモンとして機能することが強く示唆された。さらに、抗PRPamide抗体を用いた解析により、明タイプでは明刺激開始から1分程度でRPRPamideが放出されるのに対し、暗タイプでは暗刺激開始から10分以上経たないと放出が起こらないことが示唆された。このことは、暗タイプにおける卵成熟の開始および完了が明タイプよりもそれぞれ10分間ほど遅れることの要因になっていると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
明タイプ・暗タイプの双方の卵巣のトランスクリプトーム解析を行い、卵成熟誘起ホルモンのプレプロホルモンの配列を比較することができた一方で、光受容分子(オプシンやクリプトクロムなど)の同定にまでは至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
卵巣のトランスクリプトーム解析により得られた情報から、卵巣に発現しているオプシンやクリプトクロムなどの光受容に関与する物質を探索する。また、in situ hybridizationにより、これらが卵巣のどの部位に発現しているか、明タイプと暗タイプで比較を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には、トランスクリプトームの情報をもとにした比較解析が十分に行えなかった。2021年度には、この比較解析を行うとともに、これまでに得られた実験室やフィールドでの実験結果を論文としてまとめるために助成金を使用する。
|