研究課題/領域番号 |
17K07487
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
濱中 良隆 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10647572)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光周性 / ヨーロッパモノアラガイ / CDC / 細胞内電位記録 |
研究実績の概要 |
淡水産の巻貝ヨーロッパモノアラガイは産卵行動に明瞭な光周性を示す。本種の産卵行動は長日条件で促進され、エフェクターホルモンとして、脳神経節にある神経分泌細胞caudo-dorsal cell (CDC) が合成・分泌するCDC hormone (CDCH) が同定されている。1年目は、蛍光色素ルシファーイエローを充填したガラス管微小電極を用いた単一CDCからの活動記録と染色方法の確立に取り組み、細胞内電位記録法と細胞内染色法の確立に成功した。さらに、細胞内染色と抗CDCH 抗体を用いた免疫組織化学により、CDCにCDCHが発現することを組織学的に初めて明らかにした。本研究で同定されたCDCは形態学的に2種類(CDCdとCDCv)に分けられ、これは先行研究 (de Vlieger et al. 1980) の記載と合致する。CDCdは細胞体と同じ脳半球にだけファイバーを投射するが、CDCvは反対側の脳半球にも軸索を伸ばしており、両者の間には機能的な違いがあると推測された。いずれのニューロンもコミッシャーと呼ばれる神経ペプチド放出領域に出力部位に特徴的なこぶ状の構造を形成しており、ここから体液中にCDCHを分泌すると考えられる。また、CDCdとCDCv共に、細胞体の近くに樹状突起様の細い神経繊維を伸ばしており、ここで日長情報の入力を受けると予想された。 さらにCDCの電気生理学的特性を短日-長日条件間で比較した結果、長日個体のCDCは短日個体に比べて高い興奮性を示すことがわかってきた。今後、サンプル数を増やすことで、短日-長日条件間で明確な差が検出できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書にあるように、1年目に計画していた単一CDCからの活動記録と染色方法の確立に成功しており、研究は概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
単一CDCからの活動記録と染色方法の確立はすでに達成されている。今後は、サンプル数を増やしながら、短日-長日条件間でのCDCの電気生理学的特性の差を統計解析を使って明瞭な形で示す。これと並行して、CDCの前ニューロンの探索も行う。具体的には、CDCが樹状突起を伸ばす脳内領域にトレーサー色素を局所注入し、CDCに短日あるいは長日情報を伝える前ニューロンの探索を行う。
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