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2018 年度 実施状況報告書

カマキリの捕獲行動における感覚運動変換の神経基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K07488
研究機関九州大学

研究代表者

山脇 兆史  九州大学, 理学研究院, 助教 (80325498)

研究分担者 渡邉 英博  福岡大学, 理学部, 助教 (90535139)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード運動制御 / 筋電位 / 神経解剖学
研究実績の概要

物体をつかむために腕を伸ばす動作を行うには、視覚によって得られた物体の位置情報をもとに前肢への運動指令を生成する必要があり、この過程は感覚運動変換と呼ばれる。本研究の最終目標は、カマキリが餌位置に応じて捕獲時の前肢運動を調節する仕組みを調べ、感覚運動変換の神経基盤を解明することである。平成30年度は、(1)カマキリ胸部神経節の標準マップの改良、(2)捕獲行動中の運動ニューロン活動の記録、(3)運動ニューロンに対して細胞内記録・染色を行う手法の確立を試みた。
(1)脳や神経節の構造には個体差があるため、異なる個体から得られた形態データを統合するには、構造を平均化した標準マップが共通参照基盤として役立つ。平成29年度に運動中枢である胸部神経節の標準マップを作成したものの、全てのニューロパイル領域の明確な定義には至っていなかった。そのため、データを精査することで領域の再定義を行い、標準マップを改良した。
(2)前肢運動が運動ニューロンによって制御される機構を調べるために、捕獲行動中の筋電位活動を記録して関節運動との相関を解析した。その結果、前胸・基節と基節・腿節の関節運動において主要な役割を果たす筋肉が確認された。これらの筋肉を神経支配する運動ニューロンが、今後の研究対象となる。また、運動ニューロンの発火時間が関節の角度変化に影響を与えることが示唆された。
(3)前肢運動に寄与する筋肉を神経支配する運動ニューロンを同定するために、胸部神経節のニューロンに対して細胞内記録法を適用する実験装置の開発に取り組んだ。装置の改良を進めた結果、予備実験において運動ニューロン応答の細胞内記録に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度は研究室の再編による居室・実験室の移動があったため、実験の中断を余儀なくされた期間が多かった。それにも関わらず、ニューロパイル領域の再定義により胸部神経節の標準マップを改良し、筋電位の記録によって運動ニューロンの発火時間が前肢運動の制御に重要であることを示し、胸部神経節のニューロンからの細胞内記録に成功するなどの成果が得られた。特に、細胞内記録法の成功には、ガラス微小電極の先端形状やマイクロマニピュレータ装置などの改良に特段の工夫が必要であった。以上の状況を総合的に考慮し、研究はおおむね順調に進展したと判断した。

今後の研究の推進方策

今後は、改良した標準マップを利用して、前肢運動に関与する運動ニューロンや、前肢の自己受容感覚ニューロン、脳からの下降性ニューロン等のマップへの登録を進める予定である。それらのニューロンの投射先の解析により、感覚運動変換の中枢の候補部位の特定が期待できる。
捕獲行動中の筋電位の記録に関しては、一部の関節においてデータが少ないため、前肢運動にかかわる全ての関節を対象に実験を継続する予定である。これまでの筋電位の記録では各関節を単独であつかってきたので、可能であれば関節間の協調運動に注目し多数の筋肉から同時に筋電位の記録を行う。それにより、各運動ニューロンの集団発火パターンが前肢運動を制御する仕組みの解明が期待できる。
さらに、細胞内記録法・染色法による運動ニューロンの同定を継続して行い、個々の運動ニューロンの形態の解析を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究室の再編による居室・実験室の移動のために、レンタルスペースを借りるなどの想定外の支出が生じ、予定していた高速度撮影装置の購入と設置を当該年度は断念した。本装置は次年度に購入する予定である。

備考

研究室再編のため、webページは改訂中

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Unravelling the functional organization of lobula complex in the mantis brain by identification of visual interneurons2018

    • 著者名/発表者名
      Yamawaki Yoshifumi
    • 雑誌名

      Journal of Comparative Neurology

      巻: 527 ページ: 1161-1178

    • DOI

      10.1002/cne.24603

    • 査読あり
  • [学会発表] Temporal control of foreleg movements in predatory strike of the mantis2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshifumi Yamawaki
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会第40回大会、シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Control of foreleg elevation during predatory strike in the mantis2018

    • 著者名/発表者名
      Sho Ogawa, Takatoshi Ueno and Yoshifumi Yamawaki
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会第40回大会
  • [学会発表] The response properties of visual interneurons in the mantis unravel the functional organization of the lobula complex.2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshifumi Yamawaki
    • 学会等名
      The International Congress of Neuroethology
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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