研究課題
本研究は我々が発見した雄イモリ腹腺由来の雌誘引ペプチドフェロモン(ソデフリン)と雌誘引ステロイドフェロモン(アンドロステンダイオン、プレグネノ ロン)、雌イモリ卵管由来の雄誘引ペプチドフェロモン(アイモリン)についてその受容メカニズムおよび受容細胞から中枢でのフェロモン情報処理システムを明らかにすることにより、雌雄の性行動発現機構における性フェロモンの役割を探求することを目的としている。2019年度は、求愛行動の発現をたかめる下垂体ホルモン、プロラクチンが求愛行動の発現だけでなく、その前段階である陸から水への移動に関与することを確認した。すなわち、繁殖期に陸上生活から水へ移動した直後の雄イモリにイモリプロラクチン抗体を脳室内投与すると水から陸へともどること、またその後プロラクチンを腹腔内投与すると再び水へと移動することを確認した。このことは繁殖期における陸から水への移動は内因性のプロラクチンが脳に作用することを示唆している。雄ではアルギニンヴァソトシン(AVT)が雄求愛行動の頻度を高めることをすでに明らかにしているが、非繁殖期の雌にプロラクチンやゴナドトロピンを投与して性的活性を高めた状態の雌にAVTを腹腔内投与すると産卵行動(イミテーションの水草を後ろ足で抱える行動)の1時間当たりの頻度が上昇することや、持続時間の延長が起こることを明らかにした。また雄の求愛に対して雌が追従する行動指標も明らかになれば雌誘引フェロモンが雌性行動発現の神経基盤に対する作用を調べることが可能になる。
3: やや遅れている
電気生理学用機器に不具合が生じ、修理に予想以上の時間を要したため。
今後は、雌イモリの性行動の解析を進め、それに対するホルモンの作用、フェロモンの作用について精力的に解析を行う。また雄求愛行動発現にかかわる神経基盤を電気生理学的に解明することを急ぐ。それが明らかになれば、雄求愛行動発現に関与することがわかっているホルモンが神経基盤(回路)のどの部分にどのように作用するのかが明らかになる。
昨年度末に学会参加、論文発表用に昨年度使用予定であった。ところが、学会は新型コロナの感染拡大の影響で誌面発表となり交通費が不要になったため。また、昨年投稿を予定していた論文の内容がまだ不十分で追加実験が必要となり論文投稿は今年に持ち越されたため。次年度使用額については次年度での学会参加及び論文投稿費用に使用する
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