本研究は我々が発見した雄イモリ腹腺由 の雌誘引ペプチドフェロモン(ソデフリン)と雌誘引ステロイドフェロモン(アンドロステンダイオン、プレグネノロン)、雌イモリ卵管由来の雄誘引ペプチドフェロモン(アイモリン)についてその受容メカニズムおよび受容細胞から中 でのフェロモン情報処理システムを明らかにすることにより、雌雄の性行動発現機構における性フェロモンの役割を探求することを目的としている。 2022年度は雄の求愛行動の発現に、雄誘引ペプチドフェロモン(アイモリン)の嗅上皮刺激と雌の鼻先が雄の頸部に接する際の触圧覚刺激が互いにどのような効果をもたらすのかを調べた。雄の求愛行動は雌の鼻先に自らの頸部を押し当て、雌に向かって尾を折り曲げてその先端を激しく打ち振るという特徴的な行動である。繁殖期の雄イモリの尾を折り曲げる角度、尾の振れ幅や、その速度、持続時間を雄求愛行動の発現レベルの指標とし、雄イモリの周囲のアイモリン濃度と雌の鼻先に自分の頸部を押し当てる時間(=頸部刺激時間)との相関を調べた。周囲のアイモリン濃度や頸部接触時間と雄求愛行動の発現レベルの高さの間にはそれぞれに正の相関がみられ、さらにアイモリン濃度と頸部刺激時間の間には相加効果があることを明らかにした。非繁殖期の雄にプロラクチンやアンドロゲン、アルギニンヴァソトシンなどのホルモンを投与した場合には、繁殖期の雄と同様に、雄イモリの周囲のアイモリン濃度あるいは頸部刺激時間と、雄求愛行動行動発現レベルとの間に正の相関がみられた。
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