研究課題
社会性ハチ類で見られる繁殖分業には、その行動様式に特化した外分泌腺や生殖器官などの発達が伴う。これらの末梢器官の発達を促進する生理活性物質の一つとしてモノアミン類が考えられる。本研究では、セイヨウミツバチを用いて、末梢器官におけるモノアミン類の合成制御・作用機構を明らかにする。さらに、末梢器官の発達が行動と同期することから、脳と末梢器官との相互情報伝達の有無やその機構について調べる。脳が複数の末梢器官を個体の行動に合わせて調節する機構と、末梢器官がその状態を脳に伝える機構の解明に取り組み、体全体を統制していく統合システムの解明を目指す。前年度はミツバチワーカーにおける毒液中のモノアミンの存在と毒腺でのモノアミン合成酵素遺伝子の発現の結果を得た。今年度は脳と末梢器官で合成されるモノアミン量の関係を調べるために、無女王群ワーカーでの脳内と毒液内のアミン量の相関を調査した。その結果、毒液中で検出されたドーパミン、ノルアドレナリン、チラミン、オクトパミン、セロトニンにおいて、脳内量との有意な相関は見られなかった。またこれらの関連物質であるDOPA、N-アセチルドーパミン、N-アセチルセロトニン、トリプトファンにおいても脳内量との有意な相関は見られなかった。これらの結果から、脳と毒腺でのモノアミン合成の制御因子は異なると考えられる。無女王群ワーカーにおける毒液内アミン量と卵巣発達の程度を比較したところ、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンにおいて有意な正の相関が検出された。また、毒液内アミン量を女王と有女王群ワーカーで比較したところ、女王の毒液内のドーパミン、N-アセチルドーパミン、チラミン量がワーカーよりも有意に多く、異なるタイミングによる日齢増加が見られた。これらの結果より、末梢器官でのモノアミン合成の量とタイミングが繁殖分業個体で特異的に調節されていることが示唆された。
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http://www.researchgate.net/profile/Ken_Sasaki2
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