現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)チャネル型nAChRsシグナルとWntシグナル(Wnt5a)の両シグナルによる腸幹細胞の制御についての論文を作成し、オープンアクセス雑誌Int. J. Mol. Sci. に投稿し、受理された(Takahashi et al. Int. J. Mol. Sci. 2018, 19, E738)。 2)これまでに得られた成果を踏まえて(Takahashi et al. FEBS J 2014)、代謝型mAChRsのすべてのサブタイプのノックアウトマウス(M1-M5-KO及びM2/M3-double-KO-マウス)を得て、個体レベルでの解析を行う環境を整えた。 3)代謝型mAChRs-KO-マウスについては、現在、交配・繁殖中なので、個体数を確保できたM2/M3-double-KO-マウスの解析を行った。この欠損マウスから腸オルガノイドを作製し、その他のアセチルコリン受容体の遺伝子発現を定量PCRで解析したところ、mAChRs (M1,M4,M5)サブタイプの変動は見られなかったが、チャネル型nAChRsのサブユニットのαタイプ(α1,2,5,10)及びβタイプ(β2,3)に遺伝子発現の抑制が見られた。このことから、腸幹細胞の幹細胞性を維持するとともに、腸幹細胞の枯渇を防いでいる可能性が推察される。
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今後の研究の推進方策 |
1)チャネル型nAChRsを介した非神経性アセチルコリンの幹細胞制御 チャネル型nAChRsシグナルとWntシグナル(Wnt5a)の両シグナルによる腸幹細胞の制御についての論文が受理されたので(Takahashi et al. Int. J. Mol. Sci. 2018, 19, E738)、α2/β4を構成するサブユニットの欠損マウスの作製に着手する。具体的にはCRISPR/Cas9ゲノム編集システムを用いて、α2サブユニット遺伝子、β4サブユニット遺伝子、及び両遺伝子のノックアウトマウスを作出する。 2)代謝型mAChRsを介した非神経性アセチルコリンの幹細胞制御 5種類の代謝型mAChRs-KOマウス及びM2/M3-double-KOマウスの解析に着手する。各々の代謝型mAChRsノックアウトマウスの腸から腸オルガノイドを作製し、得られた成果(Takahashi et al. FEBS J 2014)の検証を行うとともに、代謝型mAChRsの下流域に働く遺伝子群を網羅的に解析し、各々のサブタイプのシグナル伝達経路を明らかにする。 3)代謝型mAChRsとチャネル型nAChRsとの機能的相互作用の解析 代謝型mAChRsとチャネル型nAChRsによる腸幹細胞制御の拮抗的二重支配を想定し、それらの機能的相互作用を明らかにする。具体的には、上記の代謝型mAChRs-KOマウス及びチャネル型nAChRs-KOマウス(作出予定)において、欠損されていないACh受容体の発現変動を解析する。
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