研究課題/領域番号 |
17K07498
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小林 慎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10397664)
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研究分担者 |
幸田 尚 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (60211893) [辞退]
石野 史敏 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60159754)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | X染色体の不活性化 / エピジェネティクス / 疾患モデルマウス / 小(無)眼球症 / 性差 |
研究実績の概要 |
ゲノムプロジェクトの成果から、「ゲノム上のがらくた」と思われてきた領域には、タンパク質をコードしないnon-coding RNA (ncRNA) が多量に存在することが分かってきた(Kapranov P、Science, 2007)。その中でmiRNAを代表とする小さなRNAの機能解析は進んでいるが、200塩基以上の長い ncRNA(long non-coding RNA, lncRNA)は、個体レベルで機能が明らかになった例は僅かであり、その生理的な役割を明らかにすることが求められている。我々が発見したFtx lncRNAの個体での機能を解析するためノックアウトマウスを作製したところ、一部の個体で、眼の発生に異常を示すマウスが出現することを明らかにした。更に興味深いことに、表現型は性差を示すことが分かった。異常は雌KOマウスで見られるが、雄では異常は見られない。また、このような異常は同腹の野生型の個体では見られない。また、異なるESラインから作製したKOマウスにも同様の異常が見られたことから、表現型はlncRNAをKOしたことに由来すると想定される。KO胎仔の形態異常はが「どの細胞」で「いつ」起こるか特定する目的で、胎仔期を遡り、発生の各ステージでの組織切片の詳細な解析を行った。異常は目の発生の初期段階から、観察され表現型の重篤度はばらつきを呈する。最も多い表現型は虹彩欠損が原因でおこる眼杯裂閉鎖不全が観察された。これはKOマウスがヒト小(無)眼球症と酷似した表現型を示すことを示している。更に、網羅的遺伝子発現解析を行ない、表現型が雌の発生に必須なエピジェネティック制御であるX染色体の不活性化(XCI)の異常で起こるモデルを提唱した(Hosoi Nat Commun 2018)。この成果はlncRNAの機能を個体及び分子レベルで理解する大きな一歩であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主にFtx KOマウスを用いながら、XCIメカニズムについて解析を進めている。これまでは、概要に記載の通りおおむね順調に進んでいる。ただし、研究期間1年目の終盤で、新型コロナウイルスが広がり、動物飼育室の施設運営が困難になった。頭数削減などの対応で何とか凌いだが、マウスの繁殖が予定通りに進まない状況が生じている。引き続きコロナウイルスとの共存を考え、今後の研究を調整する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響で今後、動物飼育施設の管理状況が予測できない状況である。遺伝子改変動物は本研究を遂行する上で必須であるが、それ以外に培養細胞を用いるアプローチも合わせ、課題に取り組む計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス交配が予定より遅れたため、研究実施期間の延長を申請し、受理された。
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備考 |
新年度から産総研は改組があり、申請者の所属名称が創薬分子プロファイリング研究センターから細胞分子工学研究部門に変更になりました。これに伴い、最新の研究紹介のweb pageへのリンクが未完成です。できるだけ早く、産総研のページで最新の研究紹介を再開したいと考えています。
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