研究課題
ゲノムプロジェクトの成果から、「ゲノム上のがらくた」と思われてきた領域には、タンパク質をコードしないnon-coding RNA (ncRNA) が多量に存在することが分かってきた(Kapranov P、Science, 2007)。その中でmiRNAを代表とする小さなRNAの機能解析は進んでいるが、200塩基以上の長い ncRNA(long non-coding RNA, lncRNA)は、個体レベルで機能が明らかになった例は僅かであり、その生理的な役割を明らかにすることが求められている。我々が発見したFtx lncRNAの個体での機能を解析するためノックアウトマウスを作製したところ、一部の雌個体で、眼の発生に異常を示すマウスが出現することを明らかにした。異常は目の発生の初期段階から、観察され表現型の重篤度はばらつきを呈する。最も多い表現型は虹彩欠損が原因でおこる眼杯裂閉鎖不全が観察された。これはKOマウスがヒト小(無)眼球症と酷似した表現型を示すことを示している。更に、網羅的遺伝子発現解析を行ない、表現型が雌の発生に必須なエピジェネティック制御であるX染色体の不活性化(XCI)の異常で起こるモデルを提唱した(Hosoi Nat Commun 2018)。従来の定説では、XCIの異常は、雌は致死と考えられてきたが、我々の結果はこの常識を覆し、部分的なXCIの異常は、雌でのみ起こる遺伝性疾患の原因となることを世界で初めて示した。この成果は、XCIのようなエピジェエンティクスのメカニズム異常と遺伝性疾患との関係を明らかにするものであり、今後のヒト遺伝性疾患を対象としたエピジェネティクス解析の重要性、発展性を示す結果である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Biol Open.
巻: 10 ページ: ー
10.1242/bio.058602.
Nat Commun.
巻: 11 ページ: 4283
10.1038/s41467-020-18031-5.
Genes Cells.
巻: 26 ページ: 165-179
10.1111/gtc.12830.
Development.
巻: 147 ページ: -
10.1242/dev.185918.
http://staff.aist.go.jp/kobayashi.shin/
https://unit.aist.go.jp/cmb5/group/8-9Group.html