研究課題
最終年度では、前年度までに見出した中枢介在神経細胞における双方向性の活動制御において、MASTキナーゼやストマチンに加えて、ジアシルグリセロールキナーゼが関与することを明らかにした。さらに、これらの因子が温度受容ニューロンで機能して、中枢介在神経細胞の活動を制御していることを確立した。前年度の解析から、この双方向性の活動制御には、温度受容ニューロンから放出される興奮性(神経ペプチド)と抑制性(グルタミン酸)のシグナルの放出バランスが関与していることが示唆されていた。そこで、本年度においては、このことをさらに確かめるため、神経ペプチド、グルタミン酸の放出が阻害されるような変異体であるunc-31、eat-4変異体を用いて実験を行い、この仮説をより強く示唆することに成功した。さらに、これらの双方向的な神経活動の制御が、行動制御にどのように寄与するのかを検討するために、行動中の多数の線虫個体を同時にトラッキングするMulti worm trackerを用いて解析を行った。この解析から、双方向的な神経活動は、「Curve」と呼ばれる線虫の前進行動中の移動方向を制御するのに重要であることが明らかとなった。すなわち、中枢介在神経細胞の双方向的な活動によって、温度環境に応じて、温度勾配を上昇(あるいは下降して)飼育温度への移動を実現していることを見出した。これらの研究成果を、原著論文として取りまとめ、論文発表に至った(Nakano et al., PNAS 2020)。また、論文発表と同時に、Press releaseも行い、新聞媒体などを通じて、研究成果の社会発信を行った。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 117 ページ: 1638~1647
10.1073/pnas.1909240117
Genes to Cells
巻: 25 ページ: 154~164
10.1111/gtc.12745
巻: 117 ページ: 6178~6188
10.1073/pnas.1918528117
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20200114_sci1.pdf