研究実績の概要 |
本研究の目的は、四色型色覚研究モデルとして「色盲メダカ」を作出することであった。令和2年度末までにCRISPR/Cas9法により、short-wavelength sensitive 1 (SWS1), SWS2, rhodopsin 2 (RH2), long-wavelength sensitive (LWS)をそれぞれノックアウト(KO)した紫、青、緑、赤の色盲系統が完成した。赤色盲と青色盲については論文に公表し、2018年のBehavioral Processes誌とBiology Open誌、2019年のScientific Reports誌、2020年のFrontiers in Genetics誌の謝辞欄に、本研究費について記載した。他に、現在投稿中の原稿が2つ、準備中の原稿が2つある。また、緑色盲についてはまだ系統が完成して間もないため、これから表現型を解析し、論文を執筆する計画である。二重色盲系統についても紫青、紫赤、青赤に関しては完成しており、三重色盲については紫青赤が完成している。紫青二重色盲を用いた実験では、野生型と同等の紫外線感受性を有することが示されており、紫や青の錐体は緑や赤の錐体に比べて波長感受性が低いことが示唆された(論文準備中)。緑色盲の作出に手惑ったため、緑を含む二重/三重色盲の作出には至らなかったが、引き続き交配によってその他の二重/三重色盲、および四重色盲を作出する。一方、メダカの色分解能を計測する新しい実験系を確立し、メダカは特定の波長の光を忌避することが明らかとなった(未発表のため具体的な数値は記載しない)。この忌避行動は特定の色盲系統では観察されないため、色分解能の低下による影響と考えられ、引き続き様々な波長と色盲系統で実験を行う計画である。
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