研究課題/領域番号 |
17K07511
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宇野 好宣 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60609717)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 軟骨魚類 / テンジクザメ目 / ジンベエザメ / 細胞培養 / 染色体解析 / 核型進化 |
研究実績の概要 |
昨年度は、軟骨魚類イヌザメを用いた胚体からの線維芽細胞の培養、そして得られた培養細胞を用いた染色体標本作製法の確立やFISH解析を行った。しかしながら、ジンベエザメのように一部の軟骨魚類は胎生であり、かつ多くの軟骨魚類種は生息個体数も少なく貴重な動物種であることから、イヌザメのように胚体や解剖後の生体試料を手に入れることができる軟骨魚類種はごくわずかである。したがって、複数の軟骨魚類種で本研究の比較染色体解析を実施するには、試料の確保が比較的容易な血液中に含まれる細胞の培養方法を新たに確立することが必要である。そこで今年度では、イヌザメと同じテンジクザメ目に属するジンベエザメ、トラフザメの血液から単離したリンパ球細胞による培養条件の検討と得られた細胞を用いた染色体解析手法の確立を試みた。その結果、解析に用いた3種すべてのリンパ球細胞において、高頻度な細胞増殖や良好な染色体中期像が観察される細胞培養条件を見出すことに成功した。今回確立した軟骨魚類における細胞培養や染色体解析手法は、本研究だけでなく軟骨魚類の培養細胞を用いた機能解析などのin vitro実験を実現可能にするものであり、軟骨魚類を用いた発生生物学や免疫学的研究に大いに貢献できると考えられる。得られたリンパ球培養細胞を用いた詳細な染色体解析の結果、ジンベエザメとトラフザメ、テンジクザメの核型はイヌザメと同様に、100本以上の染色体から構成されていることが明らかになった。さらに、これまで報告された軟骨魚類全約80種の核型情報との比較を行った結果、100本以上の染色体からなる核型を保持する種は、異なる複数の系統グループに確認されることから、軟骨魚類の共通祖先は100本程度の染色体を保持していた可能性が示唆された。この研究成果は、2020年5月に学術雑誌に投稿し、現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イヌザメだけでなく、複数の軟骨魚類種を用いた染色体解析が可能になったことから、概ね計画どおりに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
トラフザメやジンベエザメでもFISHマッピングを行い、これまで行ったイヌザメの解析結果と比較することで、マイクロ染色体の起源を含めた軟骨魚類のゲノム・染色体進化の考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降に中心に行うハイギョの解析については、いまだ効率のよい染色体標本の作製およびFISH解析についての報告がされておらず、実験方法の確立のための条件検討の予備実験が多く必要であると考えられるため、あえて今年度の支出を抑えて次年度の使用額を生じるようにした。
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