今年度は以下の研究成果を得た。 1. 飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、宿主食胞膜と共生胞の一種であるPV膜と共生クロレラをそれぞれ解析し、PV膜の成分解析に初めて成功した。 2. ミドリゾウリムシミトコンドリアモノクローナル抗体を用いた、間接蛍光抗体法の結果、共生クロレラ保持株(緑色株)と比較して、クロレラ除去株(白色株)のミトコンドリア数が多いことが分かった。 3. ミドリゾウリムシのトランスクリプトームデータから、共生クロレラの有無で発現が変化する宿主遺伝子の部分塩基配列を使って合成ペプチドを作製し、それを抗原にした抗血清を5種類作成した。その抗血清を使用してミドリゾウリムシの白色株と緑色株の抗原の細胞内局在性を間接蛍光抗体法で比較した。 4. ゾウリムシの防御器官の一種であるトリコシストとクロレラとの関連性の解明を目的とし、ミドリゾウリムシを数日間飢餓状態にして、日数経過に伴うクロレラとトリコシストの数や局在性の変化を観察した。白色細胞の飢餓培養時は、初めは細胞全体に存在していたトリコシストが日数に従って減少した。一方で緑色細胞の飢餓培養時は、日数に従って初めにクロレラがあった所にトリコシストが再生し増加した。つまり、ミドリゾウリムシは恒明条件下では、クロレラの方が優先して細胞内に留まるが、恒暗条件下で餌のない飢餓状態が継続すると、まずはクロレラを先に消化して栄養源とし、次にトリコシストを細胞内に増やすように働くことが初めて示唆された。
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