研究課題/領域番号 |
17K07519
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
吉田 尊雄 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 主任技術研究員 (60399566)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共生 / 遺伝子発現 / 進化 / 生体分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、他の共生系に比べて、その実態が把握できていない化学合成共生系における宿主と共生者の共生機構の構築と維持メカニズムについて、共生系としての宿主と共生者の相互作用を分子メカニズムで明らかにすることを目的としている。そこで、共生者である化学合成細菌(以後、共生細菌と呼ぶ)の全ゲノムが明らかとなっている宿主二枚貝シマイシロウリガイを用いて、宿主と共生細菌の発現遺伝子の同時トランスクリプトーム解析、代謝物質を解析するメタボローム解析、宿主と共生菌の遺伝子発現の局在解析などを行い、共生細菌が合成する有機物と、その有機物が宿主にどのように変換され利用されているかについて、共生細菌と宿主間の栄養供給という共生の根幹をなす基盤解明を目指す。 本年度は、宿主と共生細菌の遺伝子発現を精製段階で分けることなく、同時に発現遺伝子のシーケンスデータを取得し、宿主と共生細菌のそれぞれが発現している遺伝子の種類と発現量を比較することを目指した。シマイシロウリガイを用いて共生細菌が共生するエラ及び卵からTotal RNAを抽出し、2回のリボソーマルRNA除去処理したRNAをcDNA化し、トランスクリプトーム解析用のライブラリーを作成し、次世代シーケンスを実施した。その結果、エラのライブラリーは、共生細菌と宿主の配列データが取得できた。一方、卵のライブラリーは、アダプター配列のみなど、共生細菌と宿主の配列データ以外の配列が多く得られ、原因は、卵から得られるRNA量が少ないために生じていると考えられた。次世代シーケンスで読む量を多くすることで、解析に必要なデータ量を得ることができた。また、シロウリガイ共生系のトランスクリプトーム解析がうまくいかないことを考慮して、シンカイヒバリガイのエラを用いた共生細菌と宿主のトランスクリプトーム解析を実施して、配列データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、トランスクリトーム解析では、ライブラリー作成後のシーケンスデータ量が得られず、試行錯誤を繰り返した。そのため、トランスクリプトーム解析に時間がかかってしまい、メタボローム解析を行う予定を延期した。今後は、トランスクリトームのデータ解析を進めると同時に、メタボローム解析を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、シマイシロウリガイ及びシンカイヒバリガイのトランスクリープトームのデータ解析を進め、発現している遺伝子群を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のとおり、メタボローム解析を実施することができなかった。2019年度に同解析を実施するために使用する。
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