本研究では国内で150余種が記載されているアザミ属植物について (1)日本国内のすべての節・亜節の系統関係をMIG-seq法により明らかにする。(2)いくつかの種について分類に用いられた形態形質を測定し、その妥当性を検討する(3)特にナンブアザミ節カガノアザミ亜節の2倍体種について広域にサンプリングを行い形態学的形質とMIG-seq法を用いた系統学的形質を検討 し、アザミ属植物の分類を再検討する。 以上の3点について研究を進めた。 ナンブアザミ節カガノアザミ亜節について富山県から山口県まで日本海側各県で広域な調査、サンプリングを行った。得られたサンプルについてMIG-Seq法を用いたゲノムワイドな遺伝解析を行った。その結果従来の分類に様々な問題があることがわかってきた。また、集団内の遺伝的変異が大きく、種間変異には有意性が見られず、距離による隔離が認められ、地理的距離が離れるに比例して、遺伝的な変異が大きくなっていることが分かった。カガノアザミ亜節はカガノアザミ・オハラメアザミ・エチゼンヒメアザミ・タンバアザミのグループと、ミマサカアザミ・ゲイホクアザミ・ナガトアザミから成るグループの、2つのクラスターに大別された。アザミ属の分類は遺伝的に問題が多く、系統関係の解明には、同様の解析を幅広い種から多くの地理的集団を網羅して行うことが必要不可欠である。今回はカガノアザミ亜節について調査したが、亜節のまとまり自体に疑問符が付く状態で、より多くの種にもふくめて詳細な検討が必要であることがわかった。 つぎにアズマヤマアザミと千葉県固有種カズサヤマアザミとについて形態的な違いを調査した。その結果カ両種に記載のような違いは見られず,カズサヤマアザミを独立した種とみなすことは出来ないと考えられた.
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