研究課題/領域番号 |
17K07527
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池田 博 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (30299177)
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研究分担者 |
岩坪 美兼 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (10201344)
兼子 伸吾 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (30635983)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フクジュソウ / 福寿草 / 古典園芸植物 / 栽培化 / 倍数性 / 系統分類 / キンポウゲ科 / 遺伝的変異 |
研究実績の概要 |
江戸時代には、数多くの園芸植物が作出され鑑賞の対象とされた。そのような「古典園芸植物」は、現在でも栽培されているものの、消滅の危機に瀕している品種も少なくない。多くの園芸品種は、野生のものから選抜育種されたり品種間の交雑によって作出されたと考えられるが、その起源となった野生種の分類学的問題を含めた遺伝的変異や、栽培化の過程に関する研究は少ない。フクジュソウ属植物 (Adonis) は、キンポウゲ科に属す多年生草本で、江戸時代より「福寿草」として多くの品種が作出されてきた。フクジュソウ属の野生種に関しては、日本には4種が認められ、外部形態や染色体数により区別できるとされるが、野外集団では区別が難しい個体もあり、分類学的に混乱している。 この研究は、フクジュソウ属植物について、分子系統学的・細胞遺伝学的・形態学的手法を用い、分類学的・系統学的にその実態を明らかにするとともに、消滅が危惧される古典園芸植物「福寿草」の栽培化の過程と流通について考察することを目的とする。 2018年度は2年目に当たる。2017年度の採集では開花期にやや遅かったことから、2018年度は3月に韓国で採集を行った。韓国では、済州島に分布するものはミチノクフクジュソウ Adonis multiflora、半島部に キタミフクジュソウ A. amurensis および A. pseudoamurensis が分布するとされていた。そこで、済州島4ヶ所、および半島部3ヶ所で採集をおこなった。 予備的な形態的解析から、採集したものは、ミチノクフクジュソウ、キタミフクジュソウおよび A. pseudoamurensis の3種と考えられた。また、採集したサンプルの染色体を観察したところ、サンプルは全て2倍体 (2n=16) であり、4倍体は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、主に韓国で調査・採集を行い、形態学的解析用サンプル、分子遺伝学的解析用サンプル、および細胞遺伝学的解析用サンプルを収集し、持ち帰ることができた。予備的な形態学的解析により、済州島産のものはミチノクフクジュソウ、半島産のものはキタミフクジュソウおよび A. pseudoamurensis が含まれていることが明らかになった。また、細胞遺伝学的解析により、全てのサンプルが2n=16 の2倍体であり、4倍体は観察されなかった。したがって、これまでの報告の通り、韓国には2倍体のフクジュソウ属植物のみが分布していると考えられた。詳細な形態学的解析および分子遺伝学的解析はまだ行われていないが、2019年度のサンプルとともに解析を行うことにより、さらに詳細な結果を得ることができるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は韓国でサンプリングをおこなった。しかし、まだサンプリングが十分でない地域が残っている。国内では東北から関東、中部地方、あるいは中国・四国地方であり、海外では中国地方東部沿岸地域およびロシア極東地域である。それらの地域については、2019年度以降採集を進め、分布域全域にわたるサンプリングを行う予定である。 さらに、園芸品種として栽培されている園芸品種についても収集を進める予定である。これまでにも予備的に収集を進めているが、今後は網羅的に収集を進めていく予定である。 また、サンプルの解析については、細胞遺伝学的解析についてはかなり進めているものの、分子遺伝学的解析、形態学的解析に関してはあまり進んでいない状況であることから、今後はこれまでに収集したサンプルをもとに細胞遺伝学的解析に加え、分子遺伝学的解析、形態学的解析を進める予定である。
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