研究課題
江戸時代には数多くの園芸植物が作出され鑑賞の対象とされた。そのような「古典園芸植物」は現在でも栽培されてはいるが、消滅の危機に瀕している品種も少なくない。フクジュソウ属植物 (Adonis) はキンポウゲ科の多年生草本で、江戸時代より「福寿草」として多くの品種が作出されてきた。この研究はフクジュソウ属植物について分子系統学的・細胞遺伝学的・形態学的手法を用い、分類学的・系統学的実態を明らかにするとともに、古典園芸植物「福寿草」の栽培化の過程と流通を考察することを目的とするものである。2021年度はコロナ禍もあり、野外での採集ができなかった。そこで、これまで採集したサンプルを用いて染色体の観察をおこなった。その結果、11ヶ所で2倍体(2n=16)、2ヶ所で4倍体(2n=32)を確認した。形態的には4倍体はフクジュソウ (A. ramosa) にあたり、2倍体にはキタミフクジュソウ (A. amurensis)、ミチノクフクジュソウ (A. multiflora)、シコクフクジュソウ (A. shikokuensis)、および韓国から中国に分布するコフクジュソウ (A. pseudoamurensis) が含まれると考えられる。今回の観察では、キタミフクジュソウは韓国京畿道、ミチノクフクジュソウは千葉県富里市、京都ポンポン山、三重県藤原岳、熊本県阿蘇市、韓国済州島、シコクフクジュソウは三重県入道岳、徳島県西祖谷、高知県大豊町、熊本県八代市、コフクジュソウは韓国全羅南道が当たると考えられた。韓国には3種のフクジュソウ属植物が分布しているが、コフクジュソウについては、これまで染色体の報告はなされていなかった。今回コフクジュソウが2倍体であることが確認され、韓国産フクジュソウ属3種(キタミフクジュソウ、ミチノクフクジュソウ、コフクジュソウ)はいずれも2倍体であることが確認された。
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