研究課題
旧北区―東洋区間を隔てる動物地理区境界線の一つ「三宅線」を分布境界とした昆虫、特にチョウ類とガ類について、形態による分類学的再検討および複数の遺伝子を用いた分子系統解析や集団遺伝学的解析を行い、「三宅線」を挟んで南北に異なる昆虫相の遺伝的構造と形成過程を明らかにするとともに、各分類群で少しずつ異なる分化と多様化の成立要因を解明する。また、分岐年代を伴う生物地理学的情報に地史や気候変動の情報を重ねて過去を復元することで、系統分類学や生物地理学だけでなく、古地理学や古気象学に寄与し、さらには保全生物学への貢献も目指すことを目的とした。最終年度となる令和元年度は、対象種のDNA実験・解析を中心に取り組んだ。これまで国内では沖縄島にしか生息が確認されていなかったフタオチョウが奄美大島でも数多く発見されたことから、本種の網羅的な分子系統解析も進めた。国内調査では昨年度の悪天候で計画が阻まれた鹿児島本土や屋久島、沖縄でサンプル収集を行うことができた。海外調査では予定していた調査国の一つである台湾に赴き、カウンターパートの同行・支援によりサンプル採取や生態情報の収集などで成果が得られた。研究成果の公表では、「三宅線」の構成要素となる鱗翅類の中でもシジミチョウ科チョウ類を主とした分子系統地理や集団遺伝学的解析に関する結果を昆虫DNA研究会シンポジウムや国際生物学賞記念シンポジウム等にて発表した。さらに一部の成果を国際誌や学会誌で共同研究者らと発表した他、最新の分布情報を集約する上での文献調査の過程で得られた情報も取りまとめ、本年のチョウ類関係の総括を昆虫専門誌に出版した。研究代表者(矢後)が所属する東京大学総合研究博物館の紀要及びHPでも部分的な成果を発表した。昨年度に代表者の所属機関で開催した本研究成果を含む特別展示が日本空間デザイン賞「金賞」を受賞するなどの高い評価も受けた。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DDoubutu/Sasaki/Rhopalocera/en/index.php