研究課題
おもに外部形態と染色体数の分化が激しく分類学的に未解決課題の多いアカサビザトウムシ種群について,染色体や外部形態分化の調査をおこなった。広島県西部以西に生息するコゲチャ型(九州・広島型)はこの地域でクロオビ型(大山型)と同所的になる集団がいくつか見つかった。染色体数はこの地域ではコゲチャは2n=22またはr24,クロオビは2n=12(または14または12/13/14の多型)であるが,一部,外見はクロオビだが染色体数が2n=23の個体もみつかり部分的に交雑がおこっていることがうかがわれた。ただし分子系統解析ではコゲチャ型は四国に生息する仮称♂クロザトウムシ(四国ではクロオビ型に外見が類似するアカサビザトウムシ四国型と分布域を重ねる)と単系統群を形成するので,コゲチャ+クロザトウムシはアカサビザトウムシとは独立種をして扱うのが妥当との結論にいたった。静岡県東部ではアカサビザトウムシの東海型と関東型は漸次移行的であること,染色体数は静岡県東部では2n=12から2n=14(伊豆半島)への移行がみられることを確認できた。アカサビザトウムシ種群ならびにザトウムシの他の数群について同所性となる場合には体のサイズに1.3倍以上の開きがあることを確認し,交配前生殖隔離寄稿が未発達な本群では体サイズの違いが間違い交尾を防ぐうえで重要であるという見解をニュージーランドで開催された国際学会のシンポジウムで発表した。単為生殖のヒラスベザトウムシの2媒体集団と4媒体集団の分布の確認のため長野県北東部付近での分布状況を調査した(メリーランド大学Mercedes Burns助教授との共同研究)。志賀高原でこの付近ではこれまで未確認であったユミヒゲザトウムシ奥日光型類似の集団を確認した。土壌性のザトウムシであるニセタテヅメザトウムシ科については北米の近縁種群との系統関係を明かにした共著論文を公表した。
2: おおむね順調に進展している
地理的分化が複雑で分類学的扱いに困難をきわめていたアカサビザトウムシ種群とナミザトウムシ種群については分子系統解析の進展で,決着にむけてある程度の方向性が見えてきている。
地理的分化が複雑で分類学的扱いに困難をきわめていアカサビザトウムシ種群とナミザトウムシ種群については分子系統解析の進展で,決着にむけてある程度の方向性が見えてきたので,今後は,順次,標本にもとづく記載をすすめる予定である。
年度末近く(2月9-15日)に国際学会があり,出張経費が確定せず残金がはっきりしなかったため。小額であり,次年度の出張経費に組み入れて使用したい。
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ZooKeys
巻: 760 ページ: 1-36.
doi: 10.3897/zookeys.760.24937
山陰自然史研究
巻: 15 ページ: 7-14
巻: 15 ページ: 15-23.