研究課題/領域番号 |
17K07539
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
傳田 哲郎 琉球大学, 理学部, 教授 (50284948)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 渓流沿い植物 / 発芽特性 / タツナミソウ属 / 琉球列島 / 固有種 |
研究実績の概要 |
今年度はアカボシタツナミソウの発芽特性に関するこれまでの結果を取りまとめ、国際誌に論文「Differentiation of germination characteristics in Scutellaria rubropunctata (Lamiaceae) associated with adaptation to rheophytic habitats in the subtropical Ryukyu Islands of Japan」を投稿し、受理された。本論文では、アカボシタツナミソウの渓流型が温度に関係なく短期間で一斉に発芽するのに対し、陸型は高温条件下で著しく発芽が抑制されることを明らかにするとともに、その適応的意味について議論した。また、近縁種であるコバノタツナミの発芽特性について、アカボシタツナミソウの陸型個体と同じ傾向を示すことを明らかにし、論文中で合わせて議論した。昨年度に続き、沖縄島において採取した渓流型と陸型のアカボシタツナミソウ、九州以北の地域で採集したコバノタツナミを含むタツナミソウ属の複数種について葉緑体DNA複数領域の塩基配列を決定し、分子系統学的な解析を進めた。アカボシタツナミソウ種内に葉緑体DNAハプロタイプの多型が多く検出されたが、複数のハプロタイプがコバノタツナミと共有されていることが明らかとなった。葉緑体DNAハプロタイプの分布に地理的な傾向は見られず、両種が遺伝的に十分分化していない可能性が示唆された。これらとは別に、タツナミソウ属の植物を採集する過程において、コバノタツナミの渓流型を初めて確認した。この渓流型個体について、現在形態に関する調査を進め、論文に取りまとめる準備をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに行ってきた発芽実験の結果について、予定どおり論文として取りまとめることができた。これとは別に、コバノタツナミの渓流型を新たに発見した。渓流型コバノタツナミの発芽特性を明らかにしてアカボシタツナミソウと比較することで、琉球列島における渓流環境への適応について、さらに理解を深めることが可能になると考えている。また、分子系統学的解析については解析領域を決定してさらに解析を進めることができ、当初の計画以上に進捗していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究は計画どおり順調に進んでおり、今後も当初の計画に沿って研究を進めていく予定である。当初の計画では、アカボシタツナミソウ以外の植物について条件的渓流沿い植物を選定し、それについてさらに形態学的解析を進めると共に、発芽実験の可能性について検討する予定であった。今回、コバノタツナミに渓流型個体が確認されたことで、これについて形態学的解析と発芽特性の解析を進め、解析が終了した部分については結果を整理して論文に取りまとめる。また、アカボシタツナミソウについては分子系統学的解析を進め、渓流型の分化経路を明らかにする試みをさらに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より順調に実験が進んだことに加え、県外における採集を極めて効率良くこなすことができたため、これらの予算に余裕が生じた。今年度の調査においてコバノタツナミの渓流型が新たに確認されたことから、種子の採集のための調査旅費が余分に発生する。また、分子系統学的解析もさらに継続して行う必要があるため、これらに当該助成金を当てる予定である。
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