研究課題/領域番号 |
17K07548
|
研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
栗岩 薫 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 短時間非常勤研究員 (50470026)
|
研究分担者 |
武島 弘彦 総合地球環境学研究所, 研究部, 外来研究員 (50573086)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 小笠原 / 火山列島 / 南硫黄島 |
研究実績の概要 |
2017年度に実施した火山列島(北硫黄島・硫黄島・南硫黄島)調査で採集した浅海性魚類標本(9目37科91属133種339個体)について、標本処理をすべて完了し、国立科学博物館・神奈川県立生命の星地球博物館・鹿児島大学総合研究博物館に分散登録した。また,同調査において撮影した水中写真(9目44科108属202種930点)を,神奈川県博の魚類写真資料データベースに登録した. 採集した浅海性魚類のうち、ハタ科の稀種モモハナスズキ Liopropoma pallidum の記録を論文として発表するとともに、日本初記録であった Suttonia lineata をカザンクレナイトゲメギス(新称)とする論文も発表した。また、同じく採集したハタ科アカハタを用い、mtDNAのCyt b遺伝子~調節領域の約2.1 kbpおよび核DNAマイクロサテライト11座位を解析して、伊豆・小笠原弧における遺伝的集団構造を明らかとした。ただし、アカハタ1個体について高精度全ゲノム決定を行う予定であったが、数個体について抽出実験を行った結果、ゲノム決定を行うにはやや支障が出てきそうな程度にDNAの分断化が進んでいることが判明し、今後の実験・解析スケジュールを協議しているところである。 その他、伊豆・小笠原弧におけるアカハタの遺伝的集団構造についての解析結果を、2018年度日本魚類学会年会にて発表した。また、小笠原に生息する魚類の多様性(種多様性および遺伝的多様性)について、葛西臨海水族園にて一般の方々向けに講演を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度の調査において、ダイビングサービスに撮影を依頼した水中写真のデータ整理は完了したものの、映像についてはまだ未完了である。ただし、先方より完了間近である旨の連絡があったので、今年度(2019年度)前半には完了予定である。 ハタ科アカハタを用いた高精度ゲノム決定について、数個体についてゲノム抽出実験を行った結果、部分配列を用いた解析には支障はないものの、ゲノム決定を行うにはやや支障が出てきそうな程度にDNAの分断化が進んでいることが判明した。具体的には、鰭と筋肉からゲノム抽出を行った結果、鰭組織ではDNAの収量は多いが分断化が進んでおり、筋組織ではDNAの収量は少ないが分断化の程度はやや低い、というものである。現在、今後の対応を分担者と協議しているが、まず筋組織の量を増やして再度抽出を行い、その結果が芳しくなければ、新たに伊豆諸島で採集を行うことを予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の課題遂行は二つの計画を同時進行で行う。一つはハタ科アカハタを用いた高精度ゲノム決定および次世代シーケンサーを用いた集団ゲノミクス解析で、現在ゲノム決定についての実験を進めているところである。もう一つは成果の論文化で、火山列島における魚類相をまとめた論文および同海域で採集したウツボ科魚類の日本初記録の報告論文である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年度の採集調査において、ダイビングサービスに依頼した水中写真および映像データについて、撮影地や撮影日時などの詳細な付帯データの整理が完了せず、次年度に持ち越しとなった。また、ゲノム解析が遅れているため、その実験費用も次年度に持ち越しとなった。前者については先方より完了間近との連絡があったため、次年度前半には完了予定である。後者については分担者とともに実験スケジュールを至急勧めているところである。
|