研究実績の概要 |
日本周辺海域における数少ない海洋島環境であり,巨大な島弧である伊豆・小笠原弧上の島嶼群,伊豆諸島・豆南諸島・小笠原群島・火山列島について,ハタ科アカハタを用いた集団ゲノミクスによる遺伝的集団構造の形成史の解明を試みた.次世代シーケンサーを用いたアカハタの高精度全ゲノム配列の決定,脳・心臓・肝臓・筋肉の4組織におけるRNA Seq.を行った.それぞれの概要は以下の通りである:全ゲノム配列(約110.8Gbp, Q20-93.0%, Q30-86.3%), RNA Seq.(脳:6.7 Gbp, 心臓:7.6 Gbp, 肝臓:7.7 Gbp, 筋肉:6.9 Gbp, Q20-97.9~98.4%, Q30-94.0~95.1%).さらに高濃度ランダムプライマーとシーケンスアダプター配列を用いてジェノタイピングを行うGRAS-Di(Genotyping by Random Amplicon Sequencing-Direct)解析も行った.現在,これらにより得られたデータを基に最終的な集団ゲノミクス解析を進めている. また,初年度に行った火山列島における調査において南硫黄島で採集した標本のうち,正体不明だったウツボ科キカイウツボ属の1種について,日本初記録種コブキカイウツボとして国際誌へ論文を投稿し,受理された.同様に北硫黄島・硫黄島・南硫黄島で採集したハタ科トゲメギス属の1種についても日本初記録種であることが判明し,論文を投稿,査読を受けているところである.
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