研究課題/領域番号 |
17K07549
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
藤田 敏彦 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, グループ長 (70222263)
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研究分担者 |
岡西 政典 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (70639278)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 系統 / 分類 / 進化 / クモヒトデ綱 / 形質 / マイクロCT / 非破壊 |
研究実績の概要 |
日本国内の各地(茨城県沖,沖ノ鳥島沖,沖縄県周辺,宮城県大槌沖,神奈川県相模湾)ならびに,海外(タイおよびマレーシア)における野外調査によって,材料とするクモヒトデの追加サンプルを収集した.沖縄県の海底洞窟からは未記載種を認め論文として発表した(Okanishi & Y. Fujita, 2018).また,既存の標本からも,日本の太平洋側に分布するツルボソテヅルモヅルの一種が新種であることを認め,発表した(Okanishi & T. Fujita, 2018). 平成30年度に予定していた米国スミソニアン博物館におけるタイプ標本観察については,今年度に一部実施することができた. マイクロCTによる観察は,東京大学総合研究博物館の協力を得て観察を進めており,これまで14科58種の観察を終えている.データの分析を進めており,現在までに,これらの種において,従来は解剖でしか観察ができなかった盤や腕の内部の骨片の形態を観察することに成功している.体の各部の骨片の形態について,盤の中の骨格を中心に解析を進め,比較を行いつつある. 種レベルで系統分類に疑問がある分類群にターゲットを絞り分子系統分析を行いつつある.キヌガサモヅルに関しては,隠蔽種の識別に成功した(Okanishi et al., 2018).これまでに,ニシキクモヒトデ,ツノモヅル,シゲトウモヅル,について沖縄から相模湾までのサンプルについて,16SとCOI配列を明らかにした結果,これらの種については,日本の中ではほとんど遺伝的な差が無いことが分かった.また,ニシキクモヒトデについては,マレーシア,タイのサンプルを加えて解析を行ったところ,16S配列では,ほとんど遺伝的な差が見られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標本の収集と分析については予定通り進められている, 本研究の要であるマイクロCTによる形態観察については,東京大学総合研究博物館の協力を得ることができ,データ収集を行っているところである. これらの過程で得られたデータより学会発表ならびに研究論文の執筆も進めている.
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今後の研究の推進方策 |
分子系統解析については,初年度に引き続き,平成30・31年度も配列データの取得を継続する.データの分析を随時行うことにより,途中結果をみながら分子系統解析を進めていく. マイクロX線CTによる骨格の形態観察についても,初年度と同様の内容の観察作業を継続する.必要に応じて走査型電子顕微鏡や樹脂包埋等の他の方法でも形態観察を行う. 本年度は,第16回国際棘皮動物学会議他において,これまでに得られている一部の成果を発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)予想外の天候の不順により予定していた標本採集調査の一部が実施できなかった.それにより入手する予定であった標本の分析ができなかったため,次年度に行うこととした.そのための消耗品を次年度に購入することとした. (使用計画)当該採集調査は今年度も実施する予定であり,それによる追加標本について,マイクロCT等による形態観察データの取得ならびに分子系統解析のための塩基配列データを得る.
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