研究課題/領域番号 |
17K07559
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
堂囿 いくみ 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70462489)
|
研究分担者 |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 地理的クライン / 繁殖干渉 / 送粉生態学 / マルハナバチ |
研究実績の概要 |
近縁植物2種が同所的に分布するとき,2種間に不適応な雑種が形成されることがあり,同所的集団では交雑が起こりにくい形質が分化すると予想される。イヌヤマハッカ群(シソ科ヤマハッカ属)は地理的な花筒長変異がみられ,これが同所的に生育するクロバナヒキオコシによる繁殖干渉と関係していることが予想された。しかし,イヌヤマハッカ群の遺伝的解析では,花筒の長い系統と短い系統に分化していることがわかった。本研究では,イヌヤマハッカ2系統とクロバナヒキオコシの生殖隔離と繁殖干渉を明らかにし,形質置換の検出を試みた。 長野県奥志賀地域の単独集団4ヶ所,同所的集団3ヶ所にて調査を行った。(1)同所的集団の送粉者の訪花頻度は,2種間の花筒長差が大きい所では,送粉昆虫種が異なるため,交雑のリスクが低いと考えられる。花筒の短いイヌヤマハッカとクロバナヒキオコシは,共通の送粉昆虫だったため,交雑のリスクが高いと考えられる。(2)2種間で人工的に異種交配および混合花粉交配を行ったところ,交雑リスクの高い集団では,異種花粉が柱頭に付着しても同種交配を優先していることがわかった。(3)自然受粉の種子生産について,イヌヤマハッカとクロバナヒキオコシ共に,どの集団でも同程度だった。以上の結果から,イヌヤマハッカの長花筒系統とクロバナヒキオコシは,花筒長の種間差が大きく,送粉者を共有しないため,同所的集団においての交雑リスクは低かった。一方,イヌヤマハッカの短花筒系統とクロバナヒキオコシは,花筒長の種間差が小さく,送粉者を共有するため交雑リスクが高いが,同所的集団には異種花粉の受精を妨げるメカニズムがあると考えられ,自種花粉選好性における形質置換が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種の同所的集団の調査集団を増やしたことで,傾向が明らかになった。2種間の繁殖干渉を明らかにするための受粉実験とその結果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
受粉実験で得られた結果から,イヌヤマハッカの単独集団の受粉実験を行う必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
野外調査のアルバイト要員を確保できず,謝金が予定金額より低かった。次年度もアルバイトを確保する予定であるが,確保出来ない場合は,研究代表者の調査回数が増えるため旅費として使用する。
|