研究課題/領域番号 |
17K07562
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
和田 直也 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (40272893)
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研究分担者 |
楠本 成寿 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (50338761)
杉浦 幸之助 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (80344307)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 火山性ガス / 植生衰退 / 高山植生 / 微地形 / 積雪分布 |
研究実績の概要 |
地球温暖化による影響を受け易い脆弱な生態系である山岳上部の高山帯では、近年、火山活動の活発化に伴う環境の変化も含めて、植生モニタリングの需要が高まっている。本研究の目的は、自動車でのアクセスが困難な高標高地の山頂や噴気孔周辺に、背負って運搬が可能なsUAV(小型無人航空機・ドローン)を持込み、数㌶規模での空撮を実施し、安価で精度の高い簡便なリモートセンシングの調査手法を確立することにある。 最終年度である令和元年には、立山地獄谷周辺において、火山性ガスの影響による植生の衰退・枯損状況を評価し、衰退域の空間的な広がりと積雪や地形的要因との関係を考察した。調査は、地獄谷の噴気孔から東南側に及ぶ面積37 haの地域を対象に行った。火山活動が活発化する前の2009年における植生面積は25.8 haであったが、2019年には21.2 haとなり、枯損面積は4.6 ha(17.8%)に及んだ。植生の生残率と積雪深との関係を明らかにするため、積雪期と非積雪期において、ドローン空撮画像より数値標高モデルを算出し、その引き算により積雪深を推定した。その結果、植生の生残率は積雪深と正の関係を示し(一般化線型モデル(二項分布))、火山性ガスによる植生衰退は積雪深の浅い(消雪の早い)場所で顕著であった。同様に、植生の生残率は、噴気孔からの距離や斜面方位にも依存しており、植生衰退は噴気孔に近いほど或いは西向きの斜面でより顕著であった。積雪表面における硫黄を主成分とする着色は、噴気孔から東南東側に向かって1 km程度まで及んでいた。植生の生残率は着色の濃さ(Lab色彩座標系における (b*-a*) 値)と予想に反し正の関係を示した。火山性ガスの負荷量の多い立地であっても、積雪に被覆されることにより、植生がガスに暴露される時間が減ることで影響が緩和されることもこの原因の一つに考えられた。
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