研究課題/領域番号 |
17K07564
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎一 静岡大学, 理学部, 教授 (70332525)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 底生動物 / 長期的定点観測 / 干潟・浅海域 / 大規模干拓 / 東日本大震災 / イベント前データ |
研究実績の概要 |
本年度は、2020年6月に有明海全域106定点および干拓調整池内16定点の採泥調査を実施した。有明海全域における採泥調査は、2015年6月以来5年ぶり5回目の実施であり、これらのデータを比較することで諫早湾潮受け堤防締め切り後の有明海全域における底質と底生動物の時間的変遷を明らかにする予定である。すでに、1997年6月から2015年6月までの過去4回分の有明海全域における採泥調査の結果は、本年度に日本ベントス学会誌において論文を公表した。また、同年7月には東日本大震災から10年目の宮城県東名海岸における底生動物の定量調査を実施し、同一地点・同一方法による震災前10年間と震災後10年間のデータと比較することで、底生動物群集の回復傾向を明らかにした。これらの調査結果は、2021年3月に東北大学で実施されたオンライン公開シンポジム「東日本大震災からの再生:沿岸環境の変化10年と今後の課題」にて発表した。さらに同年8月と11月には、東名海岸および諫早湾干拓調整池においてコア試料を採取して、堆積物中の貝類遺骸集団の時間的変遷についても調査を行った。新型コロナ禍のため、韓国セマングム干拓の調査はできなかったが、共同研究者のホン・ジェサン教授と今後の研究計画や論文投稿について打ち合わせを行った。この他、2020年4月から2021年3月にかけて毎月1回、静岡県西部の浜名湖奥部6地点において潮下帯での環境・生物の定点観測を行い、アサリ稚貝の季節的な発生調査と採泥試料中の底生動物の種構成の季節変化を明らかにすることで、浜名湖におけるイベント前の通常状態における環境・生物の定量的データを収集した。また、静岡県東部の狩野川河口においても、採泥器を用いた底生動物の採集を2020年8月・12月と2021年2月に行うことで、狩野川放水路河口部周辺の堆積物および大型底生動物の季節変化を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も、当初に計画していた有明海・宮城県東名海岸・浜名湖奥部における継続調査をすべて実施することが出来た。新型コロナ禍のため海外への渡航が不可能となり、韓国セマングム干拓の調査ができなかったが、現地の共同研究者と連絡をとり、今後の調査計画と論文投稿について打ち合わせを行うことができた。また、静岡県周辺では、特に狩野川河口(バイパス放水路)において、底生動物調査を実施することが出来た。 これらの試料のソーティング作業も順調に進んでおり、過去と同一の方法・精度でのデータと比較が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、有明海・韓国セマングム干拓・宮城県東名海岸・浜名湖・静岡県内河口干潟における採泥調査をR2年度と同一の方法・精度で実施することで、大規模干拓や外来種侵入などによる人為的撹乱や、地震や津波などの自然災害に伴う環境と生物の変化過程をとらえ、急激な環境変動に対する生物の応答の普遍性を明らかにする予定である。しかし、新型コロナウィルスに伴う緊急事態宣言により、R3年度も調査の一部が実施できるかどうか不安材料となっている。特に、韓国の調査に関しては、現地の研究者と十分に打ち合わせを行って、韓国のメンバーで調査を継続してもらうことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は平成29年度から開始したが、本研究を申請後に平成28年度が最終年度であった別の科研費事業の延長が認められたため、平成29年度に実施した有明海採泥調査および韓国セマングム調査への本事業からの支出が不要となったことで、残された助成金を平成30年度以降の継続調査で使用する予定であった。そして、今年度は新型コロナウィルスの影響により、海外での現地調査が実施不可能となった。これらの助成金は、引き続き次年度の継続調査で使用する予定である。
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