研究実績の概要 |
平成29年度は2度の現地調査を行い、本研究計画の遂行に必要なデータを収集した。 林内に15台の動物自動撮影装置を設置し、主にイノシシのアクティビティ調査を行っているところである。また、保護林に隣接するアボリジニの村を訪れ、社会構造に関する調査と聞き取り調査を行った。さらに、森林構造、森林動態、森林更新に関する調査を行い、森林周辺部が、中心部と明らかに異なる森林構造、森林動態、森林更新を持つ事を明らかにした。林縁部では特に小さい木の数が減り、最近、新しい木の加入が滞っていた。これらは森林周辺部分が劣化していることを示している。また、生物多様性の評価も行い、林縁部で生物多様性が下がっていることも発見した。この成果は Shima, K., Yamada, T., Okuda T., Chiristine, F., Kassim AR.: Dynamics of Tree Species Diversity in Unlogged and Selectively Logged Malaysian Forests. Scientific Reports 8:1024 DOI:10.1038/s41598-018-19250-z. 2018 に発表した。 また、林縁部では中心部に比べ、イノシシのアクティビティが高いことをイノシシの営巣地の調査から明らかにした。森林周辺部が、中心部と明らかに異なる森林構造、森林動態、森林更新を持つ事はイノシシの活動のためだと考えられる。通常、森林の周辺部が劣化する要因はケモノとは独立なことが多いのではあるが、調査を行った森林では次の理由で、林縁部でのケモノのアクティビティの高さのせいで劣化が発生していると考えられる。つまり、この保護林では、森林の直ぐ横にアブラヤシ園が広がっており、イノシシは頻繁にアブラヤシ園に出ては、食料を調達し、このために林内のイノシシの個体群密度が高どまっているようである。 今後は、イノシシの活動とアブラヤシ園の関係、イノシシの活動と森林劣化の関係を定量的に示すことのできるデータの収集を目指す。
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