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2018 年度 実施状況報告書

サンゴ群集の大規模白化からの再生になわばり性藻食スズメダイが果たす役割

研究課題

研究課題/領域番号 17K07568
研究機関愛媛大学

研究代表者

畑 啓生  愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (00510512)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードサンゴ礁 / サンゴ大規模白化 / 復元力 / サンゴ群集
研究実績の概要

なわばりを持つ藻食性スズメダイ類は、サンゴ礁生態系において主要な一次消費者であり、そのなわばりは底質の11~70%を占めるほど高密度に存在するため、キーストーン種としての役割を持つ。2016年に海水温の上昇による世界的サンゴ大規模白化が発生し、国内最大のサンゴ礁である沖縄県石西礁湖においても約97%が白化、約56%が死滅した。この攪乱に対するサンゴ群集の復元力には、サンゴと競合する藻類を食べる藻食者が貢献するが、なわばりを持つ藻食性スズメダイ類の影響は謎である。本研究では、沖縄のサンゴ礁域で、白化前の2015年から観察しているスズメダイ6種のなわばり内外を追跡し、大規模白化からのサンゴ群集の初期再生の過程にスズメダイのなわばりが果たす役割を明らかにすることを目的としている。
2017年9月と2018年3月、9月、2019年3月に、沖縄本島周辺の瀬底島、恩納村、大度浜において6種のなわばり性スズメダイについて野外調査を行った。その結果、サンゴの大規模白化後に、サンゴの被度は、キオビスズメダイとクロソラスズメダイのなわばり内のみで有意に増加し、なわばり外では減少傾向にあることがわかった。また、なわばり内には、なわばり外に比べ高い頻度で出現する特徴的なサンゴ種が生育していること、大規模白化後に、これらのサンゴはなわばり外では消失したが、なわばり内では被度に変化が見られず維持されることが分かった。白化の影響を受けやすいとされるサンゴ種では、その被度は、大規模白化前ではなわばり外で高く、なわばり内ではほとんど見られなかったが、白化後はなわばり外で減少し、なわばり内で増加した。このことは、スズメダイのなわばり内が白化の影響を受けやすいサンゴ種の回復のための場所として機能している可能性を示唆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2017年9月と2018年3月、9月、2019年3月に、沖縄本島周辺の瀬底島、恩納村、大度浜において6種のなわばり性スズメダイについて野外調査を行った。それにより、サンゴの大規模白化の影響はなわばり内外で異なることが分かってきた。例えば、サンゴの被度は、大規模白化後は、なわばり外では減少したが、一方キオビスズメダイとクロソラスズメダイのなわばり内では逆に有意に増加していた。なわばり内には、なわばり外に比べ高い頻度で出現する特徴的なサンゴ種が生育していることが分かってきたが、大規模白化後に、これらのサンゴはなわばり外では消失したが、なわばり内では被度に変化が見られず維持されることが分かった。これらのことから、なわばり内はサンゴにとって定した環境であり、大規模白化の影響をあまり受けなかったことが示唆された。白化の影響を受けやすいとされるサンゴ種では、その被度は、大規模白化前ではなわばり外で高く、なわばり内ではほとんど見られなかったが、白化後はなわばり外で減少し、なわばり内で増加した。このことは、スズメダイのなわばり内が白化の影響を受けやすいサンゴ種の回復のための場所として機能している可能性が示唆され、今後、さらに追跡調査を行い検証を進める必要性が示された。一方で、2019年には、これまで白化を免れていた世界最南端のロードハウ島周辺のサンゴ礁で白化が確認され、日本のサンゴ礁でも夏季の白化が強く危惧される。度重なる撹乱と、そこからの回復の過程を今後も継続して追跡する必要がある。

今後の研究の推進方策

平成31年度には、2015年より調査地としている沖縄本島周辺の3地点(瀬底島、恩納村、大度浜)において、高密度でみられるなわばり性スズメダイ6種(集約的な種から粗放的な種の順にクロソラスズメダイ、キオビスズメダイ、ルリホシスズメダイ、ハナナガスズメダイ、フチドリスズメダイ、アイスズメダイ)を対象とし、スズメダイのなわばり内外におけるサンゴ群集の回復過程を続けて追い、またサンゴ群集の遷移に影響を及ぼすスズメダイの干渉、競合する藻類の遷移、スズメダイによる藻食者、サンゴ食者の排除の観察を続ける。同時に、夏季にサンゴの大規模な白化がこれらの調査地で生じればその撹乱の影響を調べられるよう、なわばり内外のサンゴ群集について白化直後と、冬季に調査を行う。得られた結果についてまとめ、学会発表を行う。

次年度使用額が生じた理由

2018年度はサンゴの大規模白化が日本のサンゴ礁域で見られなかったため。その観察のために必要な予算を次年度に使用する計画である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Hybridization between an endangered freshwater fish and an introduced congeneric species and consequent genetic introgression2019

    • 著者名/発表者名
      HATA H , UEMURA Y , OUCHI K , MATSUBA H
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 14 ページ: e0212452

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0212452

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Specialized movement and laterality of fin-biting behaviour in Genyochoromis mento in Lake Malawi2018

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Yuichi、Hata Hiroki、Maruyama Atsushi、Yamada Takuto、Nishikawa Takuma、Fukui Makiko、Zatha Richard、Rusuwa Bosco、Oda Yoichi
    • 雑誌名

      The Journal of Experimental Biology

      巻: 222 ページ: jeb191676

    • DOI

      10.1242/jeb.191676

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Hybridization between two bitterling fish species in their sympatric range and a river where one species is native and the other is introduced2018

    • 著者名/発表者名
      Uemura Yohsuke、Yoshimi Shotaro、Hata Hiroki
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 13 ページ: e0203423

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0203423

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 高緯度サンゴ群集域におけるコジリサンゴガニ属2種の記録2018

    • 著者名/発表者名
      平林勲、畑啓生
    • 雑誌名

      南紀生物

      巻: 60 ページ: 42-47

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 愛媛県松山平野における湧水性水域へのマツカサガイの試験的導入2018

    • 著者名/発表者名
      吉見 翔太郎、井上 幹生、畑 啓生
    • 雑誌名

      保全生態学研究

      巻: 23 ページ: 99~114

    • DOI

      10.18960/hozen.23.1_99

    • 査読あり
  • [学会発表] タンガニイカ湖における藻食魚類の機能形態にみられる多様化と局所適応2019

    • 著者名/発表者名
      畑 啓生
    • 学会等名
      日本生態学会 第66回大会
  • [学会発表] コイ目タナゴ亜科における希少在来種と人為移 入種との交雑と引き起こされた遺伝子浸透2019

    • 著者名/発表者名
      植村 洋亮, 大内 魁人, 松葉 成生, 畑 啓生
    • 学会等名
      日本生態学会 第66回大会
  • [学会発表] 四国西部・瀬戸内海沿岸河川におけるニホンウ ナギの分布2019

    • 著者名/発表者名
      山本 貫太, 三町 壮大, 植村 洋亮, 井上 幹生, 畑 啓生
    • 学会等名
      日本生態学会 第66回大会
  • [学会発表] 自然共存域と人為移入由来地域におけるタナゴ亜科2種の交雑2018

    • 著者名/発表者名
      植村洋亮,畑啓生
    • 学会等名
      日本魚類学会

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公開日: 2019-12-27  

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