研究課題/領域番号 |
17K07569
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
北村 俊平 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (60549674)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サイチョウ / Aglaia / Canarium / 種子散布 / 森林の空洞化 / キタカササギサイチョウ / 生態系機能 |
研究実績の概要 |
本年度は、タイのカオヤイ国立公園において、大型種子を持つ樹種(アグライアとカナリウム)の種子散布者としてのサイチョウ類4種(オオサイチョウ、シワコブサイチョウ、ビルマサイチョウ、キタカササギサイチョウ)の有効性について、既存データを組み合わせて検討した。特に人為的攪乱の影響を受けにくいキタカササギサイチョウが大型種の種子散布者としての生態系機能を代替できるのかに注目した。量的な有効性は、結実期2シーズンの訪問頻度と訪問あたりの持ち去り種子数を指標とした。質的な有効性は、吐き戻された種子の発芽率と種子散布距離を指標とした。種子散布距離の推定には、発信器を用いた個体追跡データと飼育個体への果実の給餌実験から得られた種子の体内滞留時間のデータを用いた。サイチョウ類4種のアグライアへの訪問頻度は58.7%(うちキタカササギサイチョウは28.7%)、種子の持ち去り率は41.6%(同9.9%)、カナリウムへの訪問頻度は19.5%(同3.9%)、種子の持ち去り率は44.7%(同8.8%)だった。サイチョウ類4種が吐き戻したアグライアとカナリウムの種子はいずれも高い発芽率を示し(アグライア85%、カナリウム100%)、サイチョウ類で種間差は見られなかった。オオサイチョウやシワコブサイチョウなどの大型種の種子散布距離は19-23%が1kmを超え、最大7-8kmだった。一方、小型種のキタカササギサイチョウの種子散布距離は1kmを超えたのは10%未満で、最大種子散布距離も2km未満だった。人為的攪乱の影響を受けやすい大型種やビルマサイチョウが絶滅することで、両樹種の種子の持ち去り率が10%以下に減少し、種子散布距離も大幅に減少すると予測された。両樹種の結実木周辺に落下した種子は激しい種子食害を被ることから、小型種のみでは大型種の種子散布を代替するのは難しいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者らが行った実生調査データを精査し、健全な森と空洞化した森において、サイチョウ類が利用する植物の実生の分布パターンを解析することができる情報を抽出することができた。また2019年3月に半空洞化した森の調査地の候補として、カオヤイ国立公園の西部の森を訪問し、そこでのアグライアの種子散布には、キタカササギサイチョウだけが貢献している可能性が高いことを示唆する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
既存情報を組み合わせ、大型樹種におけるキタカササギサイチョウの種子散布者としての有効性を評価した結果、キタカササギサイチョウが現存する場所であれば、種子の持ち去りは生じるが、種子散布距離は減少することが予測された。今後は、予測された現象が実際に半空洞化した森で生じているのかを確認する。そのため、植林地を利用して、アグライアを対象とした当年生実生の分布調査を行い、キタカササギサイチョウによる種子散布距離を推定することで、予測を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査中の移動に予定していたレンタカーの料金がかからなかったためと調査期間が予定よりも短かったため。繰越金額や次年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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