研究課題/領域番号 |
17K07569
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
北村 俊平 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (60549674)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 種子散布 / 種子食害 / 森林の空洞化 / キタカササギサイチョウ / カオヤイ / アグライア |
研究実績の概要 |
本年度はコロナのためにタイへ渡航しての野外調査を行うことができなかったため、既存のデータを別の視点から再解析し、その結果を先行研究に応用することで、東南アジアの複数個所の調査地において、大型の種子を持つ樹木に対する小型サイチョウ類と大型サイチョウ類の量的な有効性を評価することを試みた。量的な要素は、1)種子散布者の訪問頻度と、2)訪問あたりの種子の持ち去り数から評価される。カオヤイでサイチョウ類が主に果実を利用するセンダン科アグライアとカンラン科カナリウムを対象として申請者らが行った先行研究から、アグライアでは主に果実を利用した3種のサイチョウ類が訪問時に採食を行った割合がオオサイチョウで0.75、シワコブサイチョウで0.72、キタカササギサイチョウで0.73、さらにカナリウムでもオオサイチョウで0.98、シワコブサイチョウで0.99、キタカササギサイチョウで1.00と訪問頻度の高かった上位3種のサイチョウ類では、特定の樹種を訪問した際の採食頻度に違いがないことがわかった。
さらに訪問あたりの種子の持ち去り量とその種子サイズを掛け合わせた数値とサイチョウ類の体サイズ(胃内容積の指標)に相関関係を見いだした。この関係式をサイチョウ類による結実個体への訪問頻度と対象樹種の種子サイズがわかっているインドネシア(Leighton 1982)とインド(Sethi & Howe 2009)の先行研究に応用することで、大型種子をつける樹木におけるサイチョウ類の量的な有効性を評価することに成功した。さらに近年、インドの研究グループから得られたサイチョウ類の潜在的な種子散布距離を質的な有効性の指標として代替することで、Seed Dispersal Effectiveness Landscape上に異なる体サイズのサイチョウ類の種子散布者としての有効性を比較可能な状態で提示できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年5月の結実時期に追加調査を考えていたが、新型コロナウイルス感染症のため、該当時期には海外渡航を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、タイでも新型コロナウイルス感染症が蔓延してきており、2021年5月の結実時期の追加調査も不可能である。そのため、本年度に取り組んだ既存データの再解析の結果を組み合わせることで、野外調査を補完し、成果を取りまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行が続き、海外出張が不可能であったため。今年度はコロナウイルスの流行が収まれば渡航して追加調査を試みる。渡航が難しい場合は、今年度の解析手法を他の調査地のデータにも応用し、より一般的な傾向が得られないかを検討し、投稿論文として取りまとめる際の費用に充てる。
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