研究課題
アジアの温帯・熱帯林の主要な種子散布者である森林性鳥類の口幅サイズを測定し、鳥類が飲み込んで種子散布可能な果実サイズを明らかにする。さらにIUCNの保全状況(CR、EN、VU、NT、LC)に基づき、絶滅危惧種がアジアの熱帯林の種子散布過程に及ぼす影響を口幅サイズ分布から検討した。過去に標本調査で対象とした69科5987個体の仮剥製標本の口幅サイズのデータを再解析した。兵庫県立人と自然の博物館の仮剥製標本5625個体(主に日本・アジアの果実食鳥類)、および、公益財団法人山階鳥類研究所の仮剥製標本362個体(サイチョウ科、オオハシ科、エボシドリ科)を利用した。計測には、デジタルノギス(ミツトヨデジマチックキャリパCD-15CPX)を用いた。測定データのうち、アジア(30科255種1655個体)と日本(20科80種2746個体)、計34科335種4401個体の果実食鳥類のデータを抽出し、eBird(https://ebird.org/home)で標本ラベルの種名を2022年6月時の情報に更新した。さらに最新のIUCNの保全状況(CR、EN、VU、NT、LC)で区分し、CRからNTまで絶滅した場合、口幅サイズ分布の変化から、種子散布可能な果実サイズを検討した。日本の鳥類の口幅サイズの中央値は10.7mm、上位はハシブトガラスの26.6mm、ハシボソガラスの24.2mmであった。アジア熱帯の鳥類の口幅サイズの中央値は11.6mm、最大はオオサイチョウとアカコブサイチョウの53.1mmであった。いずれもCRとENが絶滅しても口幅サイズの分布は大きく変化しないが、CR~VUまでが絶滅すると口幅の最大値が上位20種で大幅に減少した。アジア熱帯では、CR~VUに含まれるサイチョウ類が絶滅すると同所的に生息する鳥類では、大型の果実や種子を持つ植物の種子散布を代替することが難しいと考えられた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Integrative Conservation
巻: 1 ページ: 25-39
10.1002/inc3.9