研究課題/領域番号 |
17K07578
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
島谷 健一郎 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (70332129)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 個体群動態 / 推移行列モデル / WAIC / ベイズ推定 / 観察モデル |
研究実績の概要 |
5月に研究協力者7名と研究打ち合わせ会議を行い、意見交換を行った。実データから統計モデルで推定や仮説検証を行う、数理モデルで空間パターン生成メカニズムを解明する、空間点過程の数学的基礎を充実させる。異なる3つの観点から議論を重ねた。 統計数理研究所公開講座として渡辺澄夫氏によるベイズ統計を立案したが、そこへ研究協力者5名にも受講してもらい(6月)、講義前に準備学習会、講義後に渡辺氏を交えて、新しいベイズ情報量規準WAICに関する質疑や意見交換を行った。 6月と11月に青森県のブナ2次林調査区において研究協力者と野外調査を行った。樹高について、その観察モデルに利用するため、6月と11月で同じ木を異なる人が測量し、その変動データを作った。 本研究の主要な手法である推移行列の入門書執筆について、高田氏と協議し、執筆カレンダーと手順を確立させた。 個別の課題について、それぞれの研究協力者と以下のように前進させた。標高経度に沿った多年生草本個体群動態の変異を推移行列モデルで定量的に比較検証する課題は、不完全なデータから推移行列モデルのパラメータをどう推定するかについて、検討を重ね、2月末にベイズ推定法を確立した。クローナル植物のラメット動態について推移行列作成における推定法を確立させ、推移行列モデルから示唆されるクローン植物の拡大についてシミュレーションモデルで検討する段階に入った。カタツムリ個体群動態について、専門誌へ投稿したが審査の末、却下された。観察モデルとベイズ推定に関して再検討を加えた。フィンランド極域における針葉樹林について、航空写真を用いた50年動態のデータ解析を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
推移行列モデルを核とする方針で本研究を進めている。個別の個体群動態に関する研究課題については、推移行列の構造及びデータからの統計的推定法に固有な改良を加えることで、不完全データの問題を解決してきている。また、その数理及びデータからの統計的推定法に関する基礎を普及させるための教科書執筆も、共著者との協議を済ませ、軌道に乗せることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、個別の個体群動態に関する研究打ち合わせと全体的な研究意見交換(小研究会)を並行させて進める。 多年生草本、クローナル植物、カタツムリの個体群動態については専門誌へ論文を投稿する。 最初の小研究会は6月前半、続いて3か月程度の間隔を置いて、毎回、異なる主題を設けて行う。1回目は、統計解析手法でなく、その結果からどのような推論を経て生態学的知見をもたらすか、どういう推論は飛躍あるいは誤りか、に重点を置く。 森林樹木の樹高の観察モデルに関して、昨年までの測量結果とモデルの状態を踏まえて今年もデータするための測量を行う(6月と11月)。 推移行列の入門書の原稿作成を完了し、出版社に渡す。
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