研究課題/領域番号 |
17K07585
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中務 真人 京都大学, 理学研究科, 教授 (00227828)
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研究分担者 |
荻原 直道 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70324605)
森本 直記 京都大学, 理学研究科, 助教 (70722966)
山田 重人 京都大学, 医学研究科, 教授 (80432384)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分娩 / 進化 / 霊長類 / 児頭骨盤不均衡 / 肩甲難産 |
研究実績の概要 |
ヒトは霊長類の中で、一般に難産であるとされている。ヒトの難産は、大脳化と直立二足歩行による骨盤形態の変容に起因すると考えられている。しかし、ヒトでは広い肩幅も分娩の大きな制約となるうえ、猿人の存在を考えれば、広い肩幅は大脳化よりも進化的な起源が古い可能性がある。本研究では、肩幅が分娩に及ぼす影響を明らかにするため、肩幅を含む胸郭形態、児頭骨盤不均衡の度合い、ロコモーションが互いに異なる、ヒト、チンパンジー、マカクザルを対象として、比較分析を行う。その結果より、頭部と肩の成長のパターンの類似点・相違点を明らかにする。 本年度は、2種類の解析を平行して進めた。まず、昨年度からの継続として、マカクを材料とした児頭と骨盤の形態学的な共変異分析を行った。これにより、マカクにおいては、児頭と骨盤の形態は出産の難度を緩和させるための共変異パターンを示すことが明らかになった。ヒトにおいて示唆されていた仮説を、同様に児頭骨盤比が大きいマカクにおいて実証的に示した点で注目すべき結果である。さらに、産道形態のデータから、マカクの分娩では産道の出口が入口より大きな制限要因となっていることを示した。加えて、ヒト、チンパンジー、マカクザルのX線CT(コンピュータ断層)データを用いて、計算機上で各部位の大きさを計測するための標識点を設定し、各部位の成長過程を種間比較した。これにより、それぞれの種に特異的な成長パターンが存在することが明らかになりつつある。ヒト上科の大腿骨の成長に関する関連研究論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析にデータについては必要な個体数をほぼ確保し、マカクを用いて産道形態のランドマーク分析を予備的に試みた。その結果、マカクにおいて産道の出口が入口より分娩に強い制限を与えること、その制限の強さに関する新知見を得ることができた。現在、骨格各部の成長変化を計測している。今年度前期に、肩幅の成長変化パターン分析を完了できる見込みであり、10月に予定されている学会において予報を発表予定である。今年度は計画の最終年であるが、年度内に結果をまとめ目的が達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている計測を継続する。それを修了した後、統計的解析により、これら3種において難産を回避するために頭部・肩幅の成長に抑制が働いているという解釈が支持されるかどうかを検証する。成長抑制の解釈のために、産道形態の種間差についても分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より消耗品の使用量が少なかったため次年度使用額が発生した。次年度とあわせ消耗品購入費として使用する。
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