研究課題/領域番号 |
17K07586
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹元 博幸 京都大学, 霊長類研究所, 研究員 (80379015)
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研究分担者 |
橋本 千絵 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (40379011)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | チンパンジー / 地上利用 / 森林気象 / ボノボ / 季節変化 / 捕食リスク |
研究実績の概要 |
東アフリカ,ウガンダ共和国のカリンズ森林において2017年9月から2018年3月まで,野生チンパンジーを対象に6ヶ月の野外調査をおこなった。オスメスそれぞれオトナ個体を3頭選び,一日一個体を追跡して,地上利用時間および森林内で利用する高さを測定した。また,地上付近から林冠までにデータロガーを設置し,森林気象の垂直構造およびその季節変化を記録した。行動データおよび森林気象の資料は現在整理中であるが,以前の測定により乾季の林冠部は林内地上付近に比べ4-5℃ほど気温が高く,湿度も低いことがわかっている。哺乳類の体温調節,エネルギー収支に着目して,野生チンパンジーの地上利用頻度の季節変化について解析したい。行動の時間配分(アクティビティーバジェット),森林内の食物(果実と若葉)利用可能性,一緒に行動する個体(パーティー)の個体数や性・年齢構成についても資料を収集しており,それらの季節変化について解析をおこなう。西アフリカ,ボッソウ地域のチンパンジー,中央アフリカ,コンゴ盆地のボノボ,そして東アフリカの本地域のチンパンジーの生態比較から,パン属の適応と進化,さらには初期人類の気候変化に対する適応を探りたい。
2005年から2009年までのコンゴ民主共和国ワンバ地域のボノボとギニア共和国ボッソウ地域のチンパンジーの調査資料を用いて,チンパンジーとボノボの離合集散社会解明の鍵となる,パーティーサイズの季節変化について,地上利用の程度と捕食者の影響の観点から解析し,第33回日本霊長類学会大会(2017年7月,福島)において発表した。さらに,これまで研究代表者がおこなって来たボノボの生物地理的研究について概説し,今後のボノボの生態・進化についてどのように研究を進めるべきか,考えをまとめた原稿を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はウガンダ,カリンズ森林の乾季(12月-3月)が調査の焦点であった。したがって,帰国後間も無く,データの整理が進んでいない。ただ,これは想定内であって,今年度のボノボの調査(12月-3月)までにおよそのデータをインプットし,整理しておく。ボノボの資料が収集できた後は,あわせて統計処理にかけるつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,昨年度に収集した資料をコンピューターに入力し,解析する作業を進める。予定通り,12月から3月はコンゴ民主共和国のワンバ森林においてボノボを対象に野外調査を行う予定である。 また,昨年度日本霊長類学会で発表した内容,およびそのほかの西アフリカのチンパンジーと中央アフリカのボノボの生態データについての論文化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウガンダ,カリンズ森林の調査基地のバッテリーシステムを現地で立替払いで購入した。しかし,購入するまでいくらかかるか不明で,年度末に円換算されるまで最終購入価格が決定されなかった。そこで年度末まで予算に余裕を持たせておいた。また,2017年7月の学会発表前にノートパソコンが壊れ,今年度購入予定のなかったノートパソコンを急遽購入するなど,不確定の要素があり,予備の温湿度計ロガーの購入数を減じて予算に余裕を持たせた。そのまま野外調査に入り年度末の3月まで滞在したため,次年度使用額が生じた。 今年度は,新たに温湿度計ロガーなど森林気象測定機器を購入し,センサーの劣化した機器と交換する予定である。そのほかはほぼ予定通りの支出を見込んでおり,コンゴ民主共和国への渡航費用,国際学会参加旅費,調査用消耗品類,専門図書が主な支出予定である。
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