東アフリカ,ウガンダ共和国のカリンズ森林において2019年6月から2020年3月まで滞在し,森林気象 の測定を続けた。森林内の二箇所で,地上付近から林冠までデータロガーを設置し,気温・湿度の垂直構造を10分ごとに記録した。また2017年度から2018年度にかけて収集したカリンズの行動データおよびコンゴ民主共和国,ワンバ森林のボノボの行動データの入力を行なった。 全てのデータが入力し終わったわけではないが,Takemoto (2017) によりワンバの乾季の林冠部は林内地上付近に比べ5-7°Cほど気温が高く,湿度も低いことがすでにわかっている。哺乳類の体温調節,エネルギー収支に着目 して,チンパンジーとボノボの林内空間利用について解析したい。行動の時間配分,森林内の食物利用可能性(果実と若葉),一緒に行動する個体(パーティー)の個体数 や性・年齢構成についても資料を収集しており,それらの季節変化について解析をおこないつつある。パン属の適応と進化,さらには初期人類の気候変化に対する適応を探る予定だ。 また,チンパンジーとボノボの離合 集散社会解明の鍵となる,パーティーサイズの季節変化について, 2005年から2009年までに収集したコンゴ民主共和国ワンバ地域のボノボとギニア共和国ボッソウ地域のチンパンジーの調査資料を用いて,捕食者の影響の観点から解析し,2019年年度日本哺乳類学会(2019年9月)において発 表した。
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