研究課題
本研究では、北部九州・山口西部地域の遺跡から出土した弥生時代人骨を用いて、そのゲノム情報を明らかにし、分子人類学的解析から渡来系弥生時代人の遺伝的背景の解明を目指した。2018年度は、山口西部の土井ヶ浜遺跡から出土した弥生時代人骨から抽出したDNAをもちいたショットガンシーケンスによって、ヒトゲノムの約30倍量となるヒト由来DNA塩基配列データを得ることに成功した。次世代シーケンサで得られる個々のリード配列をヒトゲノム参照配列へマッピングしたところ、各染色体に偏りなくマッピングされ、170万以上の一塩基多型(SNP)が得られた。このSNP数は、分子系統に関する様々な数理解析に十分量の配列データである。集団ゲノムデータを扱う本研究課題においては多数個体の分析は不可欠である。上述の分析データは、古人骨から得られたミトコンドリアゲノムならびに核ゲノムデータとしては極めて良好な結果である。しかし、高温多湿に加えて、酸性土壌中に埋まっていた古人骨のDNAは、基本的に保存が極めて悪いと考えるべきである。そこで、2019年度は(1)ミトコンドリアゲノムを集団解析するために実用的なインピュテーション手法を開発した(論文発表済)。適切な参照パネル(配列の集合体)をもちいることで、信頼度の低い塩基や欠失した塩基を99%以上の精度で推定することが可能である。(2)現代日本人集団と他の東アジア集団とを、主成分分析ならびに階層型クラスター分析で分離するために必要なSNP数を、実データを用いたシミュレーションによって求めた。その結果、99%以上の精度が得られる割合は、1000SNP数までは非常に低く、少なくとも3000SNP数以上が望ましいことが明らかとなった(論文査読中)。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
Plant Cell Physiol.
巻: Epub ahead of print ページ: pii: pcaa019
doi: 10.1093/pcp/pcaa019
学術の動向
巻: 25 ページ: 38-41
Bioinformatics and Biology Insights
巻: 13 ページ: 1-9
https://doi.org/10.1177/1177932219873884
DNA Research
巻: 26 ページ: 445-452
doi: 10.1093/dnares/dsz022
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 8556
https://doi.org/10.1038/s41598-019-44473-z
遺伝 : 生物の科学
巻: 73 ページ: 424-428