研究課題/領域番号 |
17K07589
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
近藤 信太郎 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (60186848)
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研究分担者 |
真鍋 義孝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (80131887)
小山田 常一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00244070)
佐々木 佳世子 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (80190114)
松野 昌展 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10297848)
根岸 慎一 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (60579118)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小臼歯 / 大臼歯 / 咬頭サイズ / 歯冠ユニット / トリゴニッド / タロニッド / カラベリー結節 |
研究実績の概要 |
日本大学松戸歯学部学生(男性54個体,女性50個体)の歯列石膏模型を用いて同一個体の上顎第一・第二小臼歯の歯冠サイズをデジタルノギスで計測した。小臼歯内の順位の差は対応のあるt検定によって検出した。舌側咬頭の頬舌径を除く歯冠サイズは第一小臼歯の方が第二小臼歯より大きかった。舌側咬頭の歯冠面積は第一小臼歯と第二小臼歯でほぼ同じであった。変動係数は発生が早い頬側咬頭の方が小さく,遅れて形成される舌側咬頭の方が大きく,形態変異が大きい傾向が認められた。第一小臼歯と第二小臼歯は舌側咬頭において形態的な相違が大きかった。 台湾先住民ヤミ族(男性83個体,女性73個体)の歯列石膏模型を用いて,カラベリー結節の発達程度と歯冠サイズを比較した。カラベリー結節の発達程度は-(舌側面が平滑な),±(窩,溝あるいは非常に小さい隆起),+(結節状)の3段階に分けた。その結果,カラベリー結節が発達するほど歯冠は大きくなることが明らかとなった。この結果は従来の報告と一致した。また,カラベリー結節の発達が良い歯は頬側2咬頭が小さく,舌側2咬頭が大きいことが分かった。カラベリー結節が発達している歯ではハイポコーンが大きく,歯冠全体の退化が小さいことが示された。 日本人男性220個体(日本大学松戸歯学部学生150名,昭和大学歯学部学生70名)の歯列石膏模型を用いて歯冠サイズと溝型・咬頭数の関係を分析した。溝型はY,+,Xに分け,咬頭数は遠心咬頭の存否によって5あるいは4咬頭に分けた。歯冠全体のサイズは5咬頭で大きかった。トリゴニッドはX型で,タロニッドはY型で大きかった。この結果はパターニングカスケードモデルによって説明できる。すなわち,近心の咬頭が発達するX型では遅く発生する遠心の咬頭の成長が抑制されるが,Y型では抑制が小さいと考えられ,発生学的に解釈することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小臼歯に関しては南太平洋フィジー人の分析を終えたところ,日本人と大きく異なった形態をしていることが分かった。そこで,日本人の形態を再検討することとした。本年度は基本的な計測を終え,ある程度の結論を出すことができたので,次年度は台湾先住民の計測を行う予定である。遅れている原因は日本人の再検討を詳細に行ったためであるが,この検討を行ったことにより,今後の研究をスムーズに進められると考えている。 大臼歯に関しては台湾先住民ヤミ族の基本的な計測と分析を終えた。そこで,本年度は歯冠形質とサイズの関係の分析としてカラベリー結節について分析した。下顎第二大臼歯の溝型と咬頭数に関しては個体数の確保できる日本人の資料を用いて分析した。とくに下顎大臼歯は大量の計測値が必要となったため,少しデータ取得に想定以上の時間がかかった。これらの要因により研究の進捗にはやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
小臼歯については台湾先住民のデータを採取して進めていきたい。日本人とフィジー人の上顎小臼歯の比較から咬頭傾斜の程度に集団間の違いがある可能性が考えられるので,新たに分担者に加わった根岸により日本人小臼歯の三次元的形態の分析を進めることとする。 大臼歯については台湾先住民の比較を中心とした分析を進めるとともに,これまでに分析を終了しているヤミ族のデータ,下顎第二大臼歯と上顎大臼歯の歯冠形質とサイズの関係の分析について論文として発表する準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた長崎大学への出張が研究代表者だけとなったことが大きな原因である。可能であれば次年度も引き続き長崎大学で計測を行ってデータを充実させたいと考えているが,データが十分集まった成果に関しては順次論文として発表していきたい。このため,次年度は主として論文作成に必要な経費として,図を作成するためのソフト,英文校正料,印刷費などが必要となる。
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