研究課題
2018年5月から長崎大学へ転出するに伴い、新たに当該施設でゲノム解析倫理申請、病理組織を使ったトランスクリプトーム解析研究の立ち上げを行い、次の進展が得られた。指定難病である特発性後天性全身性無汗症の病因解明を目的として、患者同一個体の有汗部と無汗部の皮膚病理組織残検体からマイクロダイセクションにより摘出した汗腺から微量のtotal RNAを抽出し、RNAシークエンシングを用いて病因に関わる遺伝子の発現を探索した。IPAソフトウェアを用いた発現遺伝子解析の結果、geneontology解析では免疫系や感覚受容に必要な遺伝子の発現が発汗機能の損なわれた汗腺では減少していることが確認された。特にリンパ球の性質を決める転写因子や、サイトカインが正常汗腺で発現していたことは大きな驚きであった。Pathway解析でもそれらの間に相関関係が見られ、汗腺は免疫臓器としての一面を有することが予想された。さらに汗腺にはある種の嗅覚受容体が発現していることがRNAシークエンシングで判明し、現在、それら遺伝子の発現をリアルタイムPCR、免疫染色、in situ hybridizationによって確認している。これら因子が特発性全身性無汗症の病因解明に繋がり、有効な治療の確立に貢献できるものと期待を寄せている。また診療カルテから年齢、性別、既往歴・家族歴、病歴、検査結果、治療内容とその効果に関する情報を得て、遺伝子発現レベルと患者の基礎データを照らし合わせている。これらのデータを総合的に解釈し、無汗症治療に光明をもたらし、その結果熱中症患者数の減少につなげることで国民にフィードバックする予定である。
2: おおむね順調に進展している
2018年に大阪大学から長崎大学に移り、研究の立ち上げを行なった。残余組織から抽出した汗腺のトランスクリプトーム解析により全く新しい知見を得つつある。
(1)無汗症の血中および汗中のバイオマーカー探索について、症例の拡充と裏付けとなる研究の追加、また発汗に及ぼす影響をin vivoで検証する。その結果が病態の理解と治療の確立に重要な示唆を与えるものと期待される。(2)アセチルコリンは発汗を誘導する物質である。アセチルコリンを経皮的にイオントフォレーシスによって投与すると投与部周囲に強制的に発汗が誘導される。皮膚表面に噴出した汗を定量的に測定するのが軸索反射性発汗試験である。この方法では自律神経機能を評価できないことから、確立された自律神経評価方法(起立時循環動態)による評価結果をもとに軸索反射発汗と自律神経の関係を評価する。自律神経評価について末梢の血流と発汗活動の関係をヒトで明らかにするために血流ドップラーによる末梢血流評価を行い、特に着座から起立姿勢に生じる自律血流調節作用を観察する。(3)トランスクリプトーム解析の結果を分子生物学的と病理学的に評価し、無汗の病因に迫る。
所属施設の変更に伴い、研究の立ち上げから実施する中で次年度使用が生じた。これらをin situ hybridization、RT-PCR、免疫組織、汗の性質評価(グルコース濃度)、RNAseqの受託費、顕微鏡備品などの購入に充てたい。
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