研究課題/領域番号 |
17K07592
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
高須 奈々 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 特任研究員 (30467394)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | サーカディアンリズム / 体内時計 / 視交叉上核 / 加齢 / 睡眠・覚醒リズム / 不妊 |
研究実績の概要 |
近年、晩婚化に伴い、初産年齢も高齢化傾向にあるが、年齢の上昇に伴い受精卵の着床の低下や流産のリスクも高まるために不妊で悩む人も増加している。正常な性周期を発現させる上で体内時計中枢・視交叉上核からのタイミングシグナルは不可欠であるが、加齢、不規則な生活、昼夜差の乏しい光環境は視交叉上核の神経活動リズムを減弱させるためにタイミングシグナルがうまく伝わらず、不妊を招いている可能性がある。そこで本研究課題では、現代人の不規則な生活が女性の性周期不整を招いているのか、また睡眠習慣や光環境を改善し、体内時計と1日の環境光サイクルの調和を促すことで性周期不整が改善するかを検証する。 これまでに、野生型雌性マウスをヒトの生活を模した平日(5日)と週末(2日)を導入した飼育環境下に置き、さらに週末は夜更かし・朝寝坊を模して消灯と点灯時刻を3時間遅らせると、8~12ヶ月齢の加齢初期マウスでは通常より早期に性周期不整に陥ることを明らかにした。一方、3~7ヶ月齢の若齢マウスでは性周期不整は見られなかった。夜更かし・朝寝坊はただちに生理機能のタイミングを遅らせるが、通常の生活に戻した後も加齢初期マウスは平日5日以内で元の位相に戻ることはなかった。性周期不整の背景には、近年「社会的時差ボケ」として提唱されている社会的時刻と体内時計時刻の不調和があると推測される。 3年計画の2年目にあたる平成30年度は、前年度実施研究機関の異動に伴い、新規所属機関での研究室の立ち上げ・研究実施の準備を完了した。環境光環境撹乱モデルマウスの樹立と時計遺伝子KOマウスコロニーの樹立を完了し、興味深い知見を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施機関の異動に伴い、新規所属機関での研究室の立ち上げ・研究実施の準備に時間を要したが実験環境の整備を完了した。平成30年度は、現代人の不規則な生活パターンがヒト女性の生殖機能に及ぼす影響について検証するため、環境光環境撹乱モデルマウスの樹立し、基礎データを得た。また時計遺伝子KOマウスコロニーの樹立を完了し、サーカディアンリズムと性周期の計測データから興味深い知見を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
「社会的時差ボケ」はあくまでヒトを対象として提唱されている1週間周期で引き起こされる時差ボケ状態であり、排卵周期、妊娠率などヒト女性の生殖機能への影響についてはまだよく分かっていなかった。我々は、早期不妊状態を呈する時計遺伝子KOマウスに対して、環境明暗サイクルとの調和を図ってみたところ、性周期不整や不妊症状が劇的に改善した。最終年度は、性周期の発現に必須の「視交叉上核-視床下部-下垂体-生殖器」の内的同調を図るべく、環境時刻と体内時計の調和により早期不妊症を回避する「サーカディアン戦略」を提言すべく最適環境条件を検索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
人件費として実験補助員を雇用したが、当初の予定ほど勤務時間を確保できなかった。最終年度は学生アルバイトを積極的に雇用し、研究推進を図る。
|