研究実績の概要 |
本研究の目的は、子どもの年齢変化に伴う睡眠調節の機能変化に対する要因としての睡眠恒常性機能諸側面(主観的眠気、脳波検査)と概日リズム機能諸側面(放熱反応、概日リズム位相後退、夜型化)の寄与の検証である。 本年度は児童における概日リズム位相、睡眠のタイミング、夜間の光曝露(照明環境、メディア使用)の関係に対する年齢の影響を検証した。研究協力者は47名の男女児童及びその養育者である(平均年齢 10.1±2.9歳、範囲6~15歳、男女比53%:47%)。 養育者は在宅で7日間にわたり児童の睡眠日誌を記録した。また、子どもの朝型-夜型質問票日本語版(CCTQ-J)と自宅の照明環境及び就寝時のメディア使用に関する質問紙に回答した。在宅での記録ののち、児童は隔離実験施設での低照度環境で唾液を採取され、メラトニン分泌開始時刻(DLMO)が決定された。睡眠日誌の就床時刻とDLMOとの時間差を個人の位相角差として算出した。就床時刻は年齢とともに後退を示したが(r=.717, p<.001)、DLMOは相関せず (r=-.028, p=.866)、結果的に位相角差は年齢が上がるほど増大する関係を示した(r=.631, p<.001)。低年齢の児童(6~11歳)でのみ、DLMO とクロノタイプ(休日の睡眠中央時刻)に相関が認められた(r=.411, p=.046)。多変量解析の結果、低年齢群では入眠時刻の決定要因としてDLMO(β=.538, p<.001)と就寝前のメディア使用時間(β=.203, p=.036)が抽出されたが、高年齢群では認められなかった。本研究の結果から、低年齢の児童は高年齢の児童と比較して体内時計と睡眠の結びつきが強く就寝時のメディア使用の影響を受けやすいことが示された。
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