研究課題
花芽形成を司るシロイヌナズナのFLOWERING LOCUS T遺伝子のダイズオルソログであるFT2aおよびFT5a遺伝子の開花後の茎頂の栄養生長から生殖生長への相転換に関わる機能を、1)両遺伝子の過剰発現個体における茎頂での花序分裂組織決定遺伝子APATARA1のオルソログならびにダイズの伸育性を決定するシロイヌナズナのTERMINAL FLOWER1遺伝子のオルソログであるDt1の発現解析、ならびに、2)FTと結合してAPATARA1の発現を誘導する塩基性ロイシンジッパー型の転写因子FDタンパク質のダイズオルソログとFT2aおよびFT5aタンパク質間の相互作用の解析より検討した。その結果、酵母2ハイブリッド解析から、FT5aタンパク質はFDL6タンパク質と特異的に結合し、AP1オーソログの発現を強く誘導することにより、Dt1の発現を抑制しては主茎の伸長を停止することが明かとなった。これらの成果は国際誌に受理された。感光性品種を開花誘導後長日条件下で栽培すると、咲いた花は莢へとは分化せずに落花する。一方、FT2aおよびFT5aを過剰発現させた個体では、長日下においても正常に莢の分化を進める。柱頭上での花粉発芽を観察したところ、落花する個体では柱頭上で花粉が発芽していないことが前年度までに明かになっていた。本年度は、花粉管のカロースを染色するアニリンブルー染色により花粉管の伸長を観察した。その結果、長日条件下に置かれた個体の柱頭では花粉管の伸長が見られず、一方でFT遺伝子の過剰発現個体では花粉管の伸長が見られることを明らかにした。同時に、柱頭の組織化学解析を行い、柱頭は、タンパク質から構成される組織の上に脂質状の組織が覆われていることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
長日下での莢形成阻害の原因が、花粉の柱頭上での未発芽によること、この過程にFLOWERING LOCUS TのダイズオルソログFT2aおよびFT5aが関与することを明らかにした。花粉管のカロースを染色するアニリンブルー染色により、長日下では柱頭上の花粉からの花粉管伸長が観察されないこと、一方でFTオルソログ過剰発現個体では花粉管が花柱内で伸長していることを確認した。柱頭及び花柱の組織化学分析から、ダイズの柱頭が、タンパク質から構成される組織の上に脂質状の組織に覆われていることを初めて明らかにした。これらの知見から、柱頭上の花粉発芽におけるFTオルソログの機能を解明する糸口を見い出すことができたことから、研究は順調に進展していると考えられる。
長日下での莢形成阻害の原因が、花粉の柱頭上での未発芽によること、この過程にFLOWERING LOCUS TのダイズオルソログFT2aおよびFT5aが関与し、これらが花粉発芽を促すことが予測される。今後は、以下の研究を行い、花粉発芽の機構を明らかにする。1)花粉発芽にフラボノールが関与する事例が報告されている。そこで、柱頭上の脂質組織にフラボノールが分泌されているか否か、蛍光染色を行い観察する。2)柱頭組織を採取し、そのフラボノール組成を機器分析を用いて解析する。3)柱頭組織におけるフラボノール合成遺伝子の発現を解析する。これらの成果を研究論文としてまとめる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Experimental Boatny
巻: 70 ページ: 印刷中