研究課題/領域番号 |
17K07599
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北柴 大泰 東北大学, 農学研究科, 准教授 (80431542)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 自家和合性 / ダイコン / 変異体 |
研究実績の概要 |
本研究は、偶発的に見出された自家和合性を示すダイコン変異体における自家和合性の原因を探り、自家不和合性に関与する未知の因子を同定し、自家不和合性反応の分子機構の全容解明につなげていくことを目的としている。そこで期間を通して、1.ダイコンS遺伝子の整備と変異体のS遺伝子型同定、 2.既報の自家不和合性関連遺伝子の検証、 3.新規原因遺伝子の探索、4.候補遺伝子の分子遺伝学的を行う。 本年度は3の課題に着手し進めた。 3-1.リ・シーケンスによるDNA多型の探索 自家和合性変異体と、そのもとになった品種(野生型)のゲノム塩基配列を、次世代シーケンスにより決定した。変異体と野生型の品種それぞれから2個体を供試し、72.58 Gbの品質の高い塩基配列情報を得た。得られたリードの配列をダイコンゲノムのリファレンス配列にマッピングした結果、95~97%の率でマッピングされた。その情報をもとに、リファレンス塩基配列に対するSNPを検出し、さらにそれらSNP座における変異体と野生型品種間のSNPを調査した。その結果、コーディング領域において、変異体2個体間で再現性があり、かつ、非同義的置換を引き起こす3,723のSNPが見出された。しかしながら予想より多くSNPが検出されたことから、これらSNPを絞り込むべく、QTL解析を行うこととした。 3-2.QTL解析 自家和合性変異体とハマダイコンを交雑親とするF1個体を作出し、さらにF1世代の2個体を栽培して自殖し、F2分離世代を得た。F1世代に由来するF2世代の約100個体(分離集団)を栽培し、自家不和合性の程度を調査した。F1世代は自家不和合性を示したが、F2世代の分離集団は自家不和合性と自家和合性に二分され、分離比が約9:7に分離した。一方で、F2集団のゲノムワイドな多型を得るために、MIG-Seq法とRAD-seq法の両方法で分析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり、変異体の元になった親品種と変異体の両方をリシーケンスして塩基配列情報を得、両者のSNP検出を行った。しかしながら、変異候補のSNP数が多いことからリシーケンス情報のみによる変異箇所の同定は困難であると判断した。このことは想定の範囲内であり、その回避策として計画していたQTL解析も進めることとした。F2分離集団の表現型分析を終え、遺伝子型分析を迅速に得るために、2方法で分析を進めているところであり、関連する遺伝子座の検出が得られると期待される。検出されるQTL座の近傍と、リシーケンスで得たSNP情報を照合し、変異候補箇所を絞り込んでいくことができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
リシーケンスによる変異型SNPの検出の結果、非常に多くの多型が検出されたことを受け、本研究課題にて計画していた別のアプローチとして、QTL解析も進めることとした。自家和合性変異体と野生型(自家不和合性)個体のF1およびF2分離集団を作出し、自家不和合性・和合性検定を行っている。また、F2分離集団のゲノムワイドな遺伝子型分析を迅速に進めるために、次世代シーケンサーを利用したMIG-Seq法やRAD-seq分析法を取り入れている。分離比から、2因子の補足遺伝子による支配であると推測されたため、関与する遺伝子の座を容易に特定することができると考えている。再現性を得るために、もう一度QTL解析を行うが、同様に迅速に2回目の試験を実行していく。検出された関与領域のゲノム塩基配列は、研究代表者が独自に整備したダイコンゲノム情報を参照できるため、リシーケンスで得られたSNP情報とともに、関与遺伝子の絞り込みを進めて行く。絞り込んだ遺伝子を候補遺伝子として、遺伝子の発現量、発現場所を中心に、RNAまたはタンパク質量を指標にさらに分子遺伝学的にその特性の分析を詳細に進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーによるリシーケンス解析のみでは候補遺伝子の絞り込みができず、計画していたQTL解析も進めることとした。そのため本年度の具体的な成果が出るのが遅れているため、当年度の成果発表に関する旅費の支出を控えていた。平成31年度は成果発表のための旅費を含め予定通りに予算を執行する予定である。
|