研究実績の概要 |
本研究は、偶発的に見出された自家和合性を示すダイコン変異体における自家和合性の原因を探り、自家不和合性に関与する未知の因子または遺伝子座を同定し、自家不和合性反応の分子機構の解明につなげていくことを目的としている。 前年度に、自家和合性変異体と、そのもとになった品種(野生型)のゲノム塩基配列を、次世代シーケンスにより決定し、両者間のSNPを検出して、変異体と野生型品種間のSNPを調査した。その結果、非同義的置換を引き起こす3,723のSNPが見出され、予想より多く検出されたことから原因SNPの特定は困難であると判断し、もう一つの研究戦略として計画していた遺伝解析を進めた。 自家和合性変異体と自家不和合性を示すハマダイコンを交雑親とするF2分離世代を得、F2世代の108個体(分離集団)を栽培し、自家不和合性の程度を調査した。F2世代の分離集団は自家不和合性と自家和合性のどちらかを示し、その分離比が9:7と推定された。一方で、F2集団のゲノムワイドな多型を得るためにddRAD-seq分析をし、ゲノム網羅的に5,867のSNP座について、SNPの遺伝子型と表現型との関連性を調査し、遺伝解析をした。その結果、連鎖関係にある遺伝子座が2座検出された。それらは第2染色体上と第5染色体の末端部に座乗することがわかった。いずれも 自家不和合性に関与する既知の遺伝子の座乗位置とは異なっていた。これらのことから、2つの遺伝子座に座乗する遺伝子の劣性対立遺伝子が自家和合性を引き起こす原因であると推測された。
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