研究課題
一般に植物で遺伝子組換え体を作出するためには、体細胞へ遺伝子を導入し、遺伝子が組み換えられた細胞から再び植物体を再生させるプロセスとなる。従って、細胞から植物体を再生させるための培養条件を事前に確立しておく必要がある。細胞からの植物体再生を可能とするためには、培養培地に植物ホルモンを添加する。しかし多くの植物種、また組織材料では植物体再生に至るための適切な植物ホルモンの添加条件を決定するまでに非常に多くの労力を費やす。それゆえ、細胞からの植物体再生が困難な非モデル植物種では遺伝子組換えもできないため、植物科学研究展開の妨げとなっている。本研究では遺伝子導入用ベクターに、自発的に不定胚形成を誘導する遺伝子を座乗させ、目的遺伝子導入と植物体再生を可能にする基盤システムを構築することを目的として行った。具体的には、シロイヌナズナで機能が同定されている胚発生制御に関与する遺伝子を利用し、それらを様々な制御下で発現させるための遺伝子発現カセットを複数作製した。さらにタバコの葉切片にこれらの発現カセットをアグロバクテリウム法によって導入すると、ある2種の胚発生遺伝子の発現カセットを導入した時に、培地に植物ホルモンを添加しなくてもタバコの葉切片から自発的な細胞の脱分化と分化が観察された。最終年度においては、遺伝子導入による分化誘導の再現性を確認し、分化反応中の遺伝子発現を探るべくRNAseq解析を行った。その結果、発生やホルモン応答に関与する因子が上方制御されていることが示唆された。
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Plant Cell, Tissue and Organ Culture (PCTOC)
巻: 142 ページ: 435~440
10.1007/s11240-020-01858-7