研究課題/領域番号 |
17K07602
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松島 良 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (80403476)
|
研究分担者 |
久野 裕 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (70415454)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 澱粉粒 / アミロプラスト / オオムギ / 胚乳 / 蛍光タンパク質 / イネ / 可視化 |
研究実績の概要 |
「澱粉粒」とは、植物細胞内で合成された澱粉が形成する粒子のことであり、植物種によってその形状は多様性 を示す。特に穀類の胚乳においては、その形状多様性は顕著である。例えば、イネの胚乳の澱粉粒は複数の澱粉粒子が集合してできている。これは「複粒型澱粉粒」と呼ばれている。一方、オオムギは、1つの澱粉粒子から構成される「単粒型澱粉粒」を発達させる。澱粉粒の形が決定される仕組みは分かっていない。本研究では、澱粉粒を合成するオルガネラである「アミロプラスト」に注目した。研究代表者は、これまでにイネ科植物においてアミロプラストに効率的に移行するアミノ酸配列(AmyloTarget)を同定している。AmyloTargetを融合させた緑色蛍光タンパク質(AmyloTarget-GFP)を発現する形質転換体をイネとオオムギで作出した。この形質転換体では、アミロプラスト内部にGFPが蓄積するため、蛍光顕微鏡を用いるとアミロプラストの形状を観察することができた。また、澱粉粒の内部にはGFPが浸透しないために、澱粉粒の形状は黒抜けした状態で観察された。本年度、これらのイネならびにオオムギの形質転換体の登熟胚乳を詳細に観察することにより、アミロプラストの形状をイネとオオムギで観察した。その結果、オオムギの場合には登熟初期ならびに後期において、複数の澱粉粒を含むアミロプラストが存在することを確認した。イネの場合も登熟初期においては、複数の澱粉粒を包有するアミロプラストが存在することが分かった。このことは、イネにおいてもオオムギにおいても1つのアミロプラスト内部に複数の澱粉粒が存在することを意味している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミロプラストを可視化できる形質転換体をイネならびにオオムギで作出することに成功し、登熟過程において成長するアミロプラストを観察できる系を確立できた。この結果、イネにおいてもオオムギにおいても1つのアミロプラスト内部に複数の澱粉粒が存在することが分かった。この成果を学会ならびに学術論文に発表することができた。また発表後に、この植物体を使っての共同研究の申し出が分野外からもあり、今後の研究の進展が期待できる状況にある。また、同時に行なっていたオオムギ突然変異体のスクリーニングの結果、澱粉粒の形状に異常を示す突然変異体が複数系統単離できている。この変異体にAmyloTarget-GFP遺伝子を交配により導入することにより、突然変異体においてアミロプラストの形態と澱粉粒の形態を比較する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度単離できた澱粉粒の形状に異常を示す突然変異体の解析を進める。戻し交配、二重変異体の作成、マッピングのための交配を行う予定である。特にオオムギにおいては、世代促進を円滑に進めるために、屋内における安価で簡易な育成システムを構築する必要があり、そのための条件検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文の掲載決定が決まったのが、3月であった。掲載料が最終段階まで確定されず、見積額と卸値の差額が生じた。この差額分は、次年度に研究器具の購入に使用する。
|