品種間の多型情報を対象に、PCR断片の融解温度の差分を最適化したDNAマーカー(Nearest neighboring nucleotide substitution HRM marker : NNNs-HRMマーカー)を用いたマッピングシステムの利用によって変異遺伝子の高速マッピングが可能となった。変異遺伝子の座乗領域のみを対象とした次世代シークエンスデータの解析によって、比較的短期間に変異遺伝子の同定が可能となった。 今年度は、変異系統16SN209の高速マッピングを実施した。この変異系統はトヨシロメやフクユタカと比較して、胚軸中のダイゼイン系の含量に対するゲニステイン系の含量の割合(G/Dスコア)が高く、変異体では4.81、トヨシロメが0.57、フクユタカが0.40となった。変異体とトヨシロメの交配によって得られた分離集団において子葉に含まれるG/Dスコアが変異系統の持つ値を超えるものは、43個体中17個体であった。この頻度から、G/Dスコアを変化させる劣性単一遺伝子が分離しており、16SN209変異系統が持つ変異遺伝子は、イソフラボン生合成経路におけるダイゼイン系とゲニステイン系の分岐に働くカルコン還元酵素遺伝子(GmCHR5)が原因であると推定した。16SN209のGmCHR5遺伝子上には、18番染色体の60910332番目の塩基がGからAに変化し、この変異によってGmCHR5遺伝子の469番目の塩基がCからTに変化することで、157番目のアミノ酸がグルタミン(Q)からストップコドンに変化するナンセンス変異が生じていた。このDNA多型を検出するHRMマーカーは、分離集団のゲニスチン含量マロニルゲニスチン含量に対し、有意な関連を示した。本課題では上記のような変異系統を利用した遺伝分析から変異の原因となる機能多型の同定まで比較的短期間で到達する実験系を構築した。
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